カンボジア

カンボジア経済と貧困、製造業は好調だが貧困層は大丈夫か?アジア経済を牽引

Photograph: YuJin Lim
Photograph: YuJin Lim

 

 

安く良質な労働力がカンボジアをアジアの工場へ

Photograph: Ippei Tsuruga
Photograph: Ippei Tsuruga

カンボジアがアジアの虎へ。アジア開発銀行(ADB)はカンボジアを「虎」と表現した。ADBが発表したアジア経済見通し(Asian Development Outlook)によれば、カンボジアは好調な経済成長を2017年まで続ける見込みだ。

カンボジアは、アジアの工場として一気に主役に躍り出た。中国やその他のアジア地域が賃金上昇に悩まされる中、安く良質な労働力を市場へ供給し続けるカンボジアは、多くの投資家や企業を魅了し続けている。

かつて東洋のパリと呼ばれるほどの繁栄を遂げたカンボジアも、内戦の影が暗い影を落とし数十年。長きに亘る不遇の時代があった。しかし、ここへきて経済成長と貧困削減が劇的に進み、ついには、アジア随一の経済成長を遂げる国となった。

 

工業・製造業がカンボジア経済を牽引

好調なカンボジア経済の牽引役はどのセクターだろうか。ここ数年の動向を振り返ると、カンボジア経済は農業分野の急成長に支えられてきた。しかし、ここへきてついに工業が経済を牽引し始めたのが、今回注目すべきポイントだ。

昨年の工業の成長率は11.7%を記録し、GDPに対する貢献度がもっとも大きなセクターとなった。内訳を見ると、製造業が14.1%、縫製業が10.2%の成長を遂げ、貿易額の70%を占めるに至った。

 

サービス業も好調、農業は低迷、貧困層への影響は?

Photograph: lorena pajares
Photograph: lorena pajares

好調な産業と、低迷する産業が明確に分かれてきた。工業だけでなく、サービス業も7.1%の成長を見込む。内訳は、金融・運輸・通信が8%、観光業が6.1%。

その一方、農業はエルニーニョ現象や干ばつの影響を受け、きわめて厳しい状況に置かれている。好調な第二次・三次産業に比べ、成長率は1.6%に留まった。

少しずつ、都市化や産業構造転換が進んでいるものの、貧困層のほとんどが農業に依拠して生活している構造はあまり変わっていない。

貧困層が多い農業セクターの不調は、これまで順調だった貧困削減にとって大きなチャレンジとなるかもしれない。また、気候変動など、農村部の人々がコントロールしきれないリスクが顕在化しており、予期せぬショックに見舞われる世帯も多いと予想される。

 

カンボジアが直面する開発課題-経済の多極化と貧困削減

経済に関してのみ言及すれば、開発課題は2つある。

一つ目は、経済成長の原動力が農業から製造業やサービス業へ移ってきているが、産業の多極化はもっともっと模索されるべきところ。ミャンマー経済に投資家の目が移っており、近い将来、カンボジアの労働市場が投資家の関心を引かなくなることが大きなリスクとなるだろう。

二つ目は、農業が低迷していること。過去数年間、カンボジアは芽を見張るスピードで貧困削減を達成してきた。その原動力となったのは紛れもない、農業セクターの成長だった。米価格の上昇に伴う農村部の経済成長が貧困層の経済力を底上げし、貧困率の低下につながった。しかし、一過性の農村部の経済成長は長続きせず、ここへ来て気候変動リスクとともに経済の停滞が明白となった。貧困指標のアップデートには数年かかるが、直近の干ばつの影響など、農村部の貧困層の生活が厳しさを増していることが想定される。

 

参考資料

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