カンボジア

カンボジアに死角無し?貧困が半減

photo credit: subcomandanta via photopin cc
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『2015年までに貧困を半減できるのか?』これは世界銀行が2006年に発刊した貧困アセスメントのタイトル。『貧困層はどこへ消えたのか?』これは2013年の貧困アセスメントのタイトル。ここで書きたい全てのことがこの2つのタイトルを見ればわかってもらえるかもしれない。

カンボジアはたった8年間で貧困を半減するどころか、より良い成果を達成した。華々しい経済成長は身勝手に富裕層の食卓を豊かにするだけでなく、最貧層の消費を大きく底上げした。世界銀行の推計では、貧困率は53.2%から20.5%へ改善し、貧困者数も690万人から300万人へ減少した。不平等も順調な改善を見せ、ジニ係数は0.326から0.282へ改善した。これは高い経済成長の最中にある新興国にとっては、立派な水準だと思われる。

photo credit: World Bank
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カンボジアに何が起こったのか?

マクロ経済を取り巻く良好な環境と貧困層に有利な成長パターン(プロ・プア成長)が機能し、貧困層に富が行き渡った。2004年から2011年に、カンボジアの一人当たりGDPは54.5%の上昇した。これは世界的に見ても174ヶ国中15位の高成長だ。2008年の世界経済危機で多くの国が影響を被ったことを考えれば、カンボジア経済に対する負の影響は限定的だった。

また、同時期に経済成長とともに個人消費も37.8%上昇している。成長のパターンは総じて貧困層に有利だった。消費の伸びは最貧層で56.5%、最富裕層で25.8%と右肩下がりとなっている。

貧困層はどこへ消えたのか?

それ程遠くへ行ってしまったわけではない。かつて貧困層と看做されていた人たちは、ほんの少しだけ貧困線を越えたところにいる。貧困の魔の手がすぐ届くところにいる。世界銀行は同レポートで貧困線をほんの少しだけ越えた人々を脆弱層と呼んでいる。こうした人々は2004年に460万人いたが、2011年には810万人とほぼ倍増したと推計されている。つまり、たった1,200リエル(0.3ドル)の消費水準の低下が、貧困率を倍増させるリスクを含んでいることを示している。これは、カンボジアの貧困率がほんの小さな災害や日々の生活に潜む突発的なショック(病気等の貧困リスク)によって悪化する脆弱性を孕んでいる事の暗示かもしれない。

こうした状況を踏まえて世界銀行は、貧困削減を継続するためには、現在貧困状態にいる人々だけでなく、貧困線の少し上にいる脆弱層をもターゲットとする政策が必要としている。

カンボジアにおける貧困率の推移

photo credit: World Bank
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Reference

  • World Bank (2013) Where Have All The Poor Gone? Cambodia Poverty Assessment 2013.
  • World Bank (2009) Poverty profile and trends in Cambodia – Findings from the Cambodia Socio‐Economic Survey (CSES) 2007.
  • World Bank (2006) Halving Poverty by 2015? Cambodia Poverty Assessment 2006.
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