カンボジア

カンボジアで社会政策に取り組む意義とは?

Photograph: ND Strupler
Photograph: ND Strupler

国際協力機構(JICA)が外部委託して行った調査報告書を目にする機会があった。カンボジアの社会保障セクターの外観が30ページにわたって細かく記載されているため、カンボジアでどういった社会政策が存在するのか知りたい場合にはとてもよいエントリーポイントだ。ただ、最後の政策提言に関しては疑問が残った。

報告書で示される結論は主に4つ。

  1. カバレッジ:医療保障・所得保障制度のカバレッジ拡大が喫緊の課題
  2. 財政基盤:社会保障予算の大半が外部資金に依拠していることが課題
  3. フォーマルセクター:拠出型の拡大により、財政支出を抑えるべき
  4. インフォーマルセクター:ID Poorプログラムの拡充
  5. 複数の開発パートナーが支援していることから、JICAは社会保障分野で支援する必要はない

本報告書は、カンボジアでの多くの社会政策の取り組みを紹介した上で貧困削減に必要な取り組みであるとしつつ、最後にこう締めくくる。

「(既に)複数の機関が支援を行っており、JICA が現段階において社会保障制度分野において支援を行う必要性は必ずしも高くない」

むしろ、複数の機関が支援を行っているからこそ協力の可能性が高いのではないだろうか。

まず、財政基盤に関してはどの途上国を見ても、自己資金で社会保障を運営できている国は少ない。国際的な潮流として、開発パートナーが社会保障制度のモデルをパイロット事業として複数試行し、政府がよりインパクトのあるモデルを採用する政策・立案の流れが一般的だ。一時的に増大する社会保障予算を憂う必要はあるのだろうか。むしろ、開発の早い段階で貧困層の割合が減らすことが、拠出型の社会保険の加入者を早期に増やすことができ、中長期的に見れば財政基盤強化につながるのではないだろうか。

また、日本の協力は不要なのだろうか。

他機関と協力して同分野の強化を支援するよりも、重複を避け、未着手の他の分野へ資源を投下するべきとの提言なのだろう。しかし、国際的な援助潮流とカンボジアの貧困削減政策の状況を考えれば、社会政策に取り組まないことは貧困削減に取り組まないことを意味する。トップドナーである日本の蓄積を社会政策へ反映できれば、カンボジアにとってプラス。

たとえ大規模インフラ案件であっても、社会政策のコンポーネントを少し入れるだけでも貧困削減インパクトのある案件になるのではないか。周辺住民の中から貧困層をターゲティングすれば、Public Workを働ける人向けに、他機関と協力すれば孤児・脆弱な子供(OVC)向けに条件付現金給付のパイロット案件も組み込めるのではないか。

他機関の社会政策案件と協調することはもう一つ大きなメリットがある。社会政策分野では、統計学的な手順に基づいて精緻なインパクト評価を必ず実施する。日本の援助ではまだまだ、インパクト評価は実践されていないが、社会政策分野で協力できれば、他機関がデータをとって分析までしてくれる。

こうしたインパクト評価の優れている点は、たとえば、大規模インフラを建設したことによって何%貧困率が下がったかといったことまで精緻に推定できること。インフラは完成すれば目で見て美しいとか、電気が来るようになったとか、実感できる成果が多い。しかし、貧困削減がそれによってどれほど進んだのか、語ることができればもっと良い案件となるのではないだろうか。また、他機関のそうした手法を学ぶことができれば担当者の知見・技術も向上も期待できる。

貧困削減、インパクト評価、援助強調。社会政策に足を踏み入れることは、思い浮かぶ限りの開発援助用語が眠っている洞穴を覗く楽しみに近い気がする。

参考文献

Leave a Comment

Your email address will not be published. Required fields are marked *

*