カンボジア

急速に停滞するカンボジアのマイクロファイナンス業界、金利上限引き下げが影響か

Photograph: Ippei Tsuruga

マイクロファイナンス機関の金利上限を18%に設定、カンボジア

カンボジア国立銀行は、借金超過の抑制、貧困層の支援・削減を目的として、金融機関の上限金利を年率18%に設定し、4月1日までに発動する。クメールタイムズ紙が報じた。

業界関係者は、「少し急ぎ過ぎるので、産業の成長にわずかながら影響を与える」と述べたほか、一部の関係者は、「融資へのアクセスを制限することで金融機関と貧困層に悪影響を与え、逆効果をもたらす」と述べている。大手マイクロファイナンス機関のハッタカクセカーCEOで、カンボジアマイクロファイナンス協会の会長、ホウ・レン・トン氏は、「顧客には良いことだ」と述べ、この動きを歓迎したが、「政府の決定事項に異議はないが、最近の政府の行動は少し急ぎすぎている」と話した。

調査会社メコン・ストラテジック・パートナーのマネージングパートナー、スティーブン・ヒギンズ氏は、「金利キャップは公共政策として脆弱であり、顧客の財政へのアクセスを制限し、はるかに高い金利を請求する金融業者の出現で貧困層をさらに苦しめる。マクロの視点からすれば、近年カンボジアのMFI部門がカンボジアの農村部に多くの資金を投入したことが、現在カンボジアを傷つけている」と述べた。

最大手MFIのプラサックCEOは、「この業界は長年にわたって金利を引き下げており、利率は約50%から20%まで下がった。市場の需要と供給により、金利が下降しているのは納得している。 しかし、金利が低くなれば、一部の機関は事業の持続が難しくなり、生き残れないだろう。結果的に顧客は小額ローンの引受先を探すのが難しくなり、高い利息を支払う非公式の金融業者に頼らざるを得なくなる」と話す。

(3月19日付クメールタイムズ)

マイクロファイナンス機関がカンボジア国立銀行からの援助を要求

カンボジアの中央銀行であるカンボジア国立銀行(NBC)による金利の厳しい上限発表を受けて、84のマイクロファイナンス機関(MFI)を代表する業界団体の会長がNBCからの免税または安いローンを要求すると発言した。カンボジアデイリー紙が報じた。

カンボジアマイクロファイナンス協会のホウ・レン・トン会長は、「私たちは政府とNBCに対して、MFIへの貸付金利の引き下げや、一定水準の免税を要求する」と語った。NBCにより4月1日付で実効される年利18%の上限設定が、MFIの小規模融資の平均的な年利20~30%よりも低いことから、今後、MFIは人員や経費の削減や、低所得者を対象とした融資の削減を強いられると関係者は警戒している。

メコンストラテジーパートナーズのスティーブン・ヒギンズ氏は、NBCが継続的にMFIにお金を貸すことは意味がないと説明する。同氏は、「カンボジアにおける米ドル建てのローンへの需要は、市中銀行への貸付を通じて金利や経済を管理するNBCの能力を阻害する。NBCは米ドルを印刷できないため、誰かが払わなければならない。MFIへの貸付に向けた米ドル獲得には、NBCに加え最終的には政府が払うことになるだろう」と語った。

(3月20日付カンボジアデイリー)

マイクロファイナンス機関が金利上限に寛大な構えを見せる

マイクロファイナンス協会の会長が、マイクロファイナンス機関(MFI)は4月1日付で設定される18%の上限金利に対し異論はないと発言した。クメールタイムズ紙が報じた。

同協会のホウ・レン・トン会長によると、カンボジア国立銀行(NBC)と経済財政省がMFIの円滑な管理に進めるために協会が求める仕組みを検討するという。NBCはMFIへの年間免許料の削減や、他国からのローン借入の準備預金の遅延、最小限の払込資本(10%)と準備預金(8%)の遅延などに合意した。さらに協会とNBCは、源泉徴収税(14%)と利益税(10%)の削減に向けて経済財政省と協力する。

マイクロファイナンス機関の一つであるLOLCの代表は、NBCの承認は負債削減につながりMFIの運営に大きく貢献すると発言。同機関は今年、政府に対し年間免許手数料だけで28億ドルを支払っているという。株主や貸し手との信用構築のため、MFIは運用コスト削減により、必要な経営決定が求められる。

同氏は、「上限金利が18%だと、3,000ドル以下のローンは厳しい。しかし私たちは未だ500~1,500ドルのマイクロローン(小口融資)を提供している。各MFIは生産性と効率性を強めればならない」と話す。さらに低い上限金利は、より小さなMFIの撤退にもつながるだろう。

(3月27日付クメールタイムズ)

カンボジアのマイクロファイナンス、減速へ転じる

カンボジアの最新経済動向によると、国内のマイクロファイナンス業界における信用貸の伸びは、2014年から毎年50%以上の増加など急速な成長を見せたが、2016年3月にピークを迎え、11月には31億6000万ドルと急激に停滞、2016年のMFIの信用の総伸び率はわずか4.7%だった。プノンペンポスト紙が報じた。

報告書によると、MFIのサービスを受けた総世帯数は、前年の219万から214万世帯に減少し、一方、不良債権(NPL)比率は2015年の0.7%から1.5%に倍増した。減少の理由について報告書では、競争の激化や非公式業者の台頭を挙げており、競争が激化するにつれ、ローン獲得の基準が緩和され、ローン返済、医療費、不動産の修繕など、多くの世帯が迅速かつ無担保で貸付を行う非公式業者に頼っているという。

ハッタカクセカーのホウ・レン・トンCEOは、「カンボジア国立銀行がMFI預金取扱機関に流動性カバレッジ利率(Liquidity Coverage Ratio=LCR)を課したことが、貸出の抑制につながった。しかし信用貸の減速は、業界にとってプラスであり、全当事者に利益をもたらす健全な成長に向かうと考えている」と語った。

(5月28日付プノンペンポスト)

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