ケニア

フィンテックはアフリカに学べ!ケニアで生まれた革新的モバイル送金サービス”M−PESA”のスゴさを徹底解説!

Photograph: CCAFS
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最近、至る所で話題となっている「Fin Tech(フィンテック)」という言葉。これは。金融を意味する「Finance(ファイナンス)」と、技術を意味する「Technology(テクノロジー)」を組み合わせた造語で、つまり「フィンテック」IT技術を活用した新たな金融サービスという意味です。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAフィンテックの中で、一番有名なのがモバイル決済です。携帯電話のメッセージで送金できるLINE Payや、簡単にクレジットカード決済ができるSquareや楽天スマートペイなどです。私の生活にとって最先端というイメージもフィンテックですが、実はアフリカでは既に多くの人々に普及しており、日常的に使用されています。

特に最もフィンテックが人々のインフラとして浸透している国が、東アフリカに位置するケニア共和国です。ケニアは先ほど紹介した電話番号を利用したモバイル送金サービス「M-PESA(エムペサ)」を世界に先駆けてリリースしました。現在はケニアのGDPの約5割がモバイル上で流通しているとまで言われています。世界中に大きな影響を及ぼした革新的サービス「M-PESA」とケニアのICT事情について徹底解説します。

 

アフリカで最もホットなケニアのモバイル市場とは!

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携帯電話はケニアで爆発的に普及した物の1つです。ケニアにおいて携帯事業会社最大手であるSafaricom社と契約する人は、2000年わずか1万7,000人でしたが、2010年には1200万人まで拡大しました。そして、2015年12月時点でSafaricomの契約者数は2,441万人となり、たった5年でさらに倍増しています。現在、ケニア全土で携帯の普及率は約90%に達しています。

しかし、ケニアの携帯は”SIMフリー”である為、”SIM”と呼ばれるICチップを使い分けることで、一台の携帯でいくつもの回線、電話番号を利用することが可能です。(日本のケースで考えると、SIMカードを入れ替えるだけで、DoCoMo, au, Softbankの回線を一台で利用することが可能になるというイメージです。その為、ダブルSIM携帯も存在し、一台を複数人でシェアすることも可能です)SIMの数を基準に数えれば、その数は人口比100%を超えるとも言われています。

ちなみに、その他の回線であるAietel社とOrange社は2015年12月時点で、それぞれ724万人と466万人が加入しています。

 

革新的Fintechサービス”M-PESA”の仕組みを徹底解説!

M-PESA4, Kenyaこの様な状況の中生まれたのが、”M-PESA”というサービスです。これは携帯電話を利用して、お金を送金することの出来る”モバイルバンキングサービス”です。日本で言うところの、”LINE Payの様な携帯電話のメッセージで送金できるサービスです。”M-PESA”のMは”Mobile”、PESAはスワヒリ語で”お金”を表します。Safaricom社が、ヨーロッパの大手携帯事業会社”Vodafone”との共同事業として2007年に開始しました。

このサービスは、携帯のSMS機能を利用し、お金を送金したり、引き出したりできます。ケニアでは、多くの人が銀行口座を持つこと出来ません。しかし、少額の電子取引・送金に対して強いニーズがありました。それは、貧しい地方地域では都市部に出稼ぎに出ている家族からの仕送りを頼りにしているケースが多々あるからです。また、治安が悪く、強盗やスリの発生率が高い為、現金を持ち運ぶことに対するリスクも非常に高いのです。

M-PESAは、爆発的に普及した携帯電話を使って、シンプルな銀行サービスを提供しました。その結果、銀行口座を持つことの出来ない貧困層に対して、金融サービスへのアクセスを可能にすることに成功しました。これがケニアで起きたイノベーションです。

M-PESAはリリースされてからわずか5年足らずで、人口の4割にあたる1,500万人の利用者を獲得しました。2016年3月末にSafaricom社が発表したデータによると、現在の利用者は1,660万人となっています。

流通額は驚異の5兆2940億KSHs(約5兆3,000億円)まで拡大しました。これはケニアGDP全体の約38%に当たります。Safaricomの他にも、Orange社の提供する”Orange Money”やAirtel社が提供する”airtel Money”などのサービスも存在します。その利用者を合わせると、2,500万人を超えると言われています。

 

簡単すぎて便利すぎる!送金サービスM-PESAの使い方

まずは、Safaricomショップ等で登録手続きを行います。そこで本人確認を行い、現金を自分の携帯電話にチャージします。手続きは以上です。

送金時は、SMSを送りたい相手の電話番号宛てに送るだけです。受け取った相手は、自分の携帯を持って近くのM-PESA取扱店に行くことで、現金を受け取るが出来ます。最低10KSH(約10円)から利用が可能です。ただ引き出す際には、金額に応じて引き出し手数料がかかります。定期的に変更されるので、取り扱い店は以下の様な一覧ポスターを掲示しています。

また、M-PESAでは送金だけでなく公共料金の支払いや、携帯電話の料金の支払いも可能です。

 

システムを支える取扱店舗網!爆発的に増えた理由とは!?

M-PESAが地方の人々でも気軽に利用できるのは、ケニア全土に存在するM-PESA取扱店のネットワーク網です。その数なんと100,744店舗です。ちなみに、日本の大手5社のコンビニの数が約40,000店舗(2011)です。ケニアは人口が日本の3分の1しかいませんので、どれだけ身近なところに取扱店があるのかが想像できるかと思います。

取扱店もここ数年で爆発的に増えています。ちなみに2013年時点では店舗数は39,400店でした。こんなに普及した理由の1つは、取引店はM-PESAのサービスをを副業で行っている場合がほとんどだからです。実は本業は小売店だったり、ガソリンスタンドだったりします。

 

世界を牽引するケニアのICT分野!その原動力とは!?

Fintech, Kenya

現在、Safaricom社が提供するFintechのサービスは送金に留まらず、”M-Shwari”や”M-Kopa”などM-PESAの仕組みを活用したサービスを次々とリリースし、成功をおさめています。利便性の向上やサービスの拡充等もあり、今後も普及が進むものと考えられます。

またケニアはIT分野のインキュベーション施設”IHUB”があり、数多くのスタートアップが生まれています。これまで1万人以上のメンバーが利用し、150社のスタートアップが誕生しました。

IHUB BRCK, Kenya例えば、IHUBから誕生した”BRCK(ブリック)”は、「インターネット接続をバックアップする」をコンセプトに、停電すると最寄りのGSM携帯ネットに自動的に接続するオリジナルのモデムを開発しました。また同時に通信教育用の安価なタブレットも開発し、初等学校向けに教育コンテンツの配信を行っています!

この様なクリエティブな若者たちの台頭が、ケニアのFintech分野が世界トップクラスの価値を創造し続ける原動力ともなっています。

どこの国のどんな人々も必ずニーズを持っています。それをモノがない、貧しいからと言う理由で可能性がないと安易に考えてはいけません。むしろ貧しいからこそ多くのニーズを持っており、そこにアプローチすることで新たなイノベーションが生まれてきます。ケニアのICT分野に今後も目が離せません。

 

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