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国際協力、復興の狼煙をあげるのは一人のコトバから

Photograph: Ippei Tsuruga

国際協力が落ちぶれないために

Photograph: Ippei Tsuruga

実務に携わっている人が自分の言葉で発信しなければ、日本の国際協力業界は落ちぶれていく一方だ。最前線で活躍する個人が発信するようになれば、国際協力への理解は深まり、盛り上がる。

ことあるごとに、そんな趣旨のことを書き連ねて久しい。実務に携わっている人の多くは、私的な場で話すとネタが尽きることが無い。留まることを知らないマシンガントークを披露する人がとても多い。それだけ情熱を傾けて仕事をしている。しかし、それが公的な場、とりわけ出版物やインターネット上での発言・発信となると、一気にトーンダウンしてしまう。理由は明確で、公に発信することが追加業務であって、発信しなくてもよいからだ。一方、税金や寄付で成り立っている事業が多い分、公の場で個人が下手な発言をすると組織が叩かれるリスクが極めて高い。そのため、広報・発信に関するガイドラインが団体ごとに整備され、事実上の情報統制が敷かれている状況が国際協力業界全体に蔓延しているのが実態だ。

こうした状況下、個人名で発信することは百害あって一利なし。国際協力業界で働く実務家にとってリスクはあれど、メリットは無いわけである。しかし、大本営発表が面白くないのはいつの時代も変わらぬこと。綺麗に整えられた当たり障りの無い文章の羅列が関心を集めることは少ない。日本の国際協力業界の発信力は、このまま地に落ちてしまうのか。

そんな危機感を持った私は、JICA職員だった頃にThe Povertistを始めることを思いついた。個人名で発信することのリスクは果てしなく大きく、批判も覚悟の上だった。冷たい視線を感じたことも、ネット上で叩かれたことも、数えきれないほど多い。それでも、少しずつ、少しずつではあるが、実務や研究の第一線で活躍する人が自分の言葉で語り始めるプラットフォームが出来上がりつつある。

The Povertistは今、そんな過渡期にある気がする。

復興の狼煙

Photograph: Ippei Tsuruga

先日、JICAのホームページを眺めていて、あるページにたどり着いた。第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)のページである。偶然見つけたそのページには、「JICAスタッフディスカッションペーパーシリーズ on アフリカ」という記載。書いているのは吉澤さんというJICA職員だ。アフリカ援助のベテランで、私もご縁があって、アフリカ関係の研究・発信では足掛け4年間くらい一緒に仕事をさせていただいたことがある。

このディスカッションペーパーシリーズを偶然見つけ、本当に感慨深かった。アフリカ援助の第一線で働いているJICA職員が、自らの分析に基づいて自分の言葉で発信する。しかも、研究者ではなく、実務家が発信する。そこに意義がある。

ページを開いてみると、注意書きがある。「本ペーパーで表明された見解は著者のものであり、公式見解を代表するものではない」。個人の見解を組織のホームページで公表する。風向きが変わってきた。

日本の国際協力の復興元年。狼煙が上がるのを遠くから眺めている感覚を覚えた。

クラウドファンディングが結ぶ点と点

ここ数年で日本の国際協力に大きな変化が現れた。クラウドファンディングである。日本全国に散らばっていた国際協力へ貢献したい人と援助団体がオンライン上でマッチングされ始めた。点と点が結ばれていく。特に、Readyfor(レディーフォー)が展開する事業は破竹の勢いで広がりを見せ、広く日本中で受け入れられている。

Readyforが実施する「VOYAGE」という国際協力活動応援プログラムがある。これまでに18団体、合計7,600万円以上の寄付を日本全国から集めた。VOYAGEプログラムは、2017年2月19日に第3期目の募集を終え、国際協力という大海原へ船出のときを待っている。

VOYAGEプログラムのオフィシャルサポーター

Photograph: Ippei Tsuruga

VOYAGEプログラムの田才さんとご縁があって、The PovertistがVOYAGE 3のオフィシャルサポーターに加わることとなった。二つ返事で頷いてみたものの、具体的な協力内容は考えていなかった。

The Povertistにできることは何か。クラウドファンディングに挑戦する団体の事業に携わる実務家が、開発課題やアプローチを発信する場が日常的にあれば面白い。実務家が発信するプラットフォームを提供できれば、日本の国際協力へ新しい風を吹き込むことができる。それなら、協力できるかもしれない。

国際協力に携わる団体は寄付が必要なときだけ発信するのではなく、日常的に発信し続けることが大切なのだと思う。クラウドファンディングが成功するかどうかは、一瞬のプレゼンの上手さではなく、日々の発信の成果である。そして、日々の発信の積み重ねが、国際協力に対する理解を生む。

実務に携わる私たちは、「恵まれない子供たち」の写真を見せてお金を集めるのではなく、専門性の高い複雑な内容であっても、開発援助の現場をしっかり伝えることに重きを置くべきだ。感情に訴えるだけの国際協力ではなく、もう一歩進んだ国際協力を目指したい。納税や寄付をする全ての人々が国際協力に携わっている。私たち実務家の仕事は、わかりやすく伝えるだけではなく、開発途上国の複雑な課題を正確に、かつ、タイムリーに自分の分析と見解を添えて伝えること。そうすることで、国際協力に対する全ての日本人の理解が深まる好循環が生まれる。これが新しい国際協力の時代に求められていることだろう。

貧しい別世界に住む誰かへ寄付するのではない。今この瞬間、私たちと同じ空気を吸って、同じ時間を過ごしている誰かと繋がる。国境を越えて、その国の社会や人々と繋がる。そのきっかけが、クラウドファンディングを通じて得られる体験であってほしい。

国際協力事業に携わる皆さんへ

ODA事業で建設されたインフラには、必ずステッカーが貼られます。

「From The People of Japan」

この言葉の本当の意味を実現するためには、税金や寄付金を出す側の全ての人が国際協力をより深く知ることが大切だと思います。そのためには、私たち実務家が個人の言葉で発信し続けることがなにより大切です。事業に携わる中で触れる、開発課題をどう分析し、どう解決していくのか。実務の現場で起きている日常を伝えることで、少しずつ国際協力が盛り上がっていく感覚を共有できればと思います。

The Povertistはそうした個人の発信のプラットフォームとしてお手伝いしたいと考えています。ご賛同頂ける情熱にあふれた実務家の皆様からのご連絡をお待ちしております。

執筆をご希望の場合は、お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

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