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『現金給付』という映画を撮ろう

photo credit: Jonathan Kos-Read via photopin cc
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映画の撮影をしよう。タイトルは『現金給付』。ちょっとシュールなタイトルだけど。

あなたが映画監督だとすればまず何をするだろう。脚本を書き、キャスティングをし、撮影チームの編成をするだろう。ディカプリオに沈む船の上での演技を任せるかもしれないし、ジョニー・デップにジャック・スパロウを演じさせるかもしれない。

条件付現金給付や現金給付プログラムの実施は、まさに映画を一本撮るようなもの。今日は撮影の裏側を少しお話しする。


条件付現金給付は実施可能か?

条件付現金給付(Conditional Cash Transfer: CCT)の最大の課題は、設計通りに途上国政府が実行できるか、という点かもしれない。

現金給付が貧困削減アプローチの主流となりつつある。世界銀行はCCTを強く推進し、人間開発分野の中期計画の主柱に据えている。肝心の貧困削減効果についても、研究機関が行うインパクト評価を通じてエビデンスが積み重ねられつつある。特にマサチューセッツ工科大学(MIT)のエスター・デュフロ教授率いるAbdul Latif Jameel Poverty Action Labや世界銀行のスタンスに近いIFPRIなどがCCTの効果測定を盛んに行っている(※参考記事)。Duflo教授の著書「貧乏人の経済学(Poor Economics)」がベストセラーとなったことは記憶に新しいが、彼女の十八番「Randomised Control Trial」がこれ程までに有名となったのはCCTの主流化が一役買っているといえるかもしれない。

一方、英国開発庁(DFID)は条件を付さない現金金給付(Unconditional Cash Transfer: UCT)を推進してきている。CCTの実施に際し、受給者が条件をクリアしているかどうかモニタリングする必要が生じる。受給家庭の子供たちの小学校の出席率は十分か。赤ん坊は予防接種を受けたか。妊婦は定期健診に行っているか。2ヶ月ごとにモニタリングを行い、次の現金給付を行うか政府が決める。モニタリングを行うためには、保健施設や学校のモニタリング体制を強化する必要があり、中央省庁へタイムリーに吸い上げる基盤づくりが不可欠となる。CCTを設計どおりに実施するには、モニタリングコストがかさむ。行政コストに支出するくらいなら、今日、明日の生活に困っている貧困層へ同額を給付した方が良いのではないか。UCTの発想はここにある。

CCTとUCT、どちらが良いか。これは不毛な議論に過ぎない。国、地域、文化、人口動態。政策の妥当性は、あらゆる条件に影響される。どちらの案件デザインが良いか。テストをして決めよう。一般的に、CCTとUCTのどちらが良いかはパイロットプロジェクトを通じてテストされ、インパクト評価を通じて緻密に検証される。

その国でもっとも効果の高い案件デザインを考え、検証し、途上国政府へ提示する。これが現金給付案件で開発パートナーが果たす役割となる。費用対効果、財務持続性に関する分析もこの中で行われる。

そして技術的な貢献をするのが研究者の役割。

予算を確保し、スケールアップするのは途上国政府の役割となる。

セクターやアクターの壁を超え、貧困削減というひとつの目標に総力を結集するのが、現金給付プログラムの強みなのかもしれない。

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