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世界銀行がITを2016年の主要テーマに

 

World Development Report 2016 - ICT

世界銀行によるWorld Development Reportが2016年1月に発行された。2016年のタイトルは「Digital Dividends(デジタル化の恩恵)」となっており、「経済開発におけるITの役割」がレポートのテーマになっている。上図はレポートから抜粋した「とある1日の世界におけるネット利用状況」である。

World Development Reportは世界銀行が毎年発行しているレポートで、毎年1つのテーマが選ばれる。ここ数年は以下のとおり。

2012年:Gender Equality(ジェンダー平等)
2013年:Jobs(雇用)
2014年:Risk and Opportunity(リスクと機会)
2015年:Mind, Society and Behavior(心理、社会、行動)
2016年:Digital Dividends(デジタル化の恩恵)
2017年:Governance and Law(ガバナンスと法律)

このテーマに選ばれていることはICTがホットなトピックの一つと認識されていることの証であり、個人的にはこのテーマが選定されたことは嬉しい。また、非常に多くの数字・グラフを使ったレポートになっているので、ITと経済開発に関するドナーの動き等についての数字的な裏付けが欲しい時などに使えると思われる。

さて、内容についてだが、概要を以下のようにFAQ形式で紹介したい。全文も公開されているので、興味ある方はアクセスしてみて欲しい。

Q1. このレポートは何のためのもの?

インターネットや携帯、そして関連する技術の経済開発へのインパクトを調査したものである。Part 1ではデジタル技術のポテンシャル(大半は未だポテンシャルのまま)、Part 2では政策などへの提言をまとめている。

Q2. Digital Dividendsとはいったい何?

デジタル化によって受け得るメリット・利益・恩恵などのこと。成長・雇用そしてサービスがデジタル化の最も大きなリターンになりうる。それに基づき、このレポートではビジネス・人・そして政府におけるデジタル化の役割について説明している。

Q3. デジタル技術はどのように開発を促進し、Digital Dividendsを生むのか?

情報コストを減らすことで、IT技術は会社・個人そして公的機関の経済的そして社会的なコストを下げることができる。レポートでは革新性、効率性、包括性といったキーワードについて解説している。

Q4. なぜこのレポートではDigital Dividendsの広がる速度が不十分だと言っているのか?

1つ目の理由は、いまだ60%の人たちはインターネットを使える環境になく、デジタル経済に参加できていない。また、ジェンダー、地理、年齢や収入による情報格差(デジタル・デバイド)も大きい。2つ目の理由は、インターネットにも新しいリスクがある。不安定な規制やデジタルプラットフォームの未成熟などが問題を引き起こす可能性があるし、雇用にも影響が出てくるだろう。このようにインターネットが世界の不平等を助長する懸念がある。

Q5. これらのリスクを和らげるため、各国は何をするべきか?

インターネットに繋がることがまず必要。しかしそれでは十分では無く、「アナログ・コンポーネント」が重要になってくる。アナログ・コンポーネントとはネットなどの適切な制度設計、技術を持つ人材の育成、そしてそれを実施していく組織などであり、それらをきちんと整備していくことでデジタル化の恩恵を正しく受けられる環境が整う。

Q6. 繋がっていない人たちを繋げるために何が必要か?

民間中心の部分としては、市場での競争、官民連携、インターネットや携帯電話環境の整備などが重要。それに加えた公的機関の次のステップとしては、サイバー犯罪への対策やプライバシーの問題、そしてオンラインの監視などが必要になってくる。

Q7. このレポートの結論は?

デジタル開発戦略やICT戦略より広い視点が必要である。すべての人が繋がること(Connectivity)は重要かつ挑戦的な目標である。しかし、各国は技術が効果的に使われるための土台を作る必要がある。アナログ・コンポーネントが不十分であると、開発効果は大きく減少する。逆にアナログ・コンポーネントが正しく整備されれば、大きくデジタル化の恩恵、すなわち成長の加速化、雇用創出、よいサービス、を受けることが可能になる。

 

ICT for Development.JPより転載

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