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ビジネスで貧困削減をするという選択肢:Bコーポレーション

Photograph: UncommonGoods
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米国東海岸のサードウェイブコーヒーで、 Macbookを見つめるミレニアル世代の若者たち。軒先の「Certified B」のステッカーを背景に 、Skypeでつながっている先はインド・コルカタ。パタゴニアのロゴが付いたオーガニック・コットンのジャケットをラフに羽織り、Ben&Jerry’sのアイスクリームを頬張りつつも、熱心に打ち合わせをする彼らは、「稼げる」仕事より、「社会を変える」仕事に熱中している米国トップスクールのMBA生です。

市場原理を活用して持続的に社会・環境問題の解決を目指すベンチャーやインパクト・インベストメント[1]への就職を希望する彼らは、殺虫剤で皮膚がただれた農民、呼吸器疾患で学校に行けない子ども、汚染された水を飲む妊婦らの生活を改善する、コルカタ発の社会的企業ONganic[2]の創始者に対して、一定期間農薬を使わずに育てられたオーガニック作物の市場開拓とサプライチェーンの最適化に関する経営改善提言をまとめていました。

彼らが所属するイェール大学経営大学院 は、社会的な利益に貢献する企業(「Bコーポレーション(通称Bコープ)」)と認定された企業に就職した場合、学生ローンのうち年間最大10,100米ドル(約100万円/年)を免除するプログラムを提供しています。「Bコーポレーション」とは、製品・サービスを通じた社会・環境問題への貢献から、従業員の勤務環境、企業の財務状況に至るまで、全方位的に企業を評価し、NPO法人のB Lab[3]に民間認証を受けた企業(郡)です。B Labによるロビー活動は予想以上に早く功を奏し、米国の30を越える州において関連法が整備されています。経済的利益と社会的利益を同時に追求し、ビジネスの力を社会に活用する企業が「ベネフィット・コーポレーション(州によって若干名称が異なる)」として、非営利組織でも営利組織でもない独自の法人格を有し、社会的投資家の関心を引きつけています。

卒業生の年収が学校ランキングを左右するMBAにおいても、身を粉にして働けば「稼げる」とわかっている仕事より、困難な社会問題に取り組み、創造的な解決策を見出し、人の役に立つ仕事に魅力を感じる学生が増えているのです[4]。優秀な学生の関心の変化は、小規模の社会的企業を増やすだけでなく、CSV(共有価値の創造)[5]の考えに同調する大企業にも影響を与えています。BコーポレーションであるBen&Jerry’sを買収したユニ・リーバ社のCEOポール・ポールマン氏が「世界最大のBコーポレーションを目指す」と公言[6]する等、優秀な人材の獲得を目論む大企業も、B Labの査定ポイントに基づいて業務を見直し、社会的企業への移行をすすめています。

2016年7 月時点で、日本で認定されたB Corpはありませんが、世界50カ国における1,836社が認定B コーポレーションとして、ビジネスを通じて社会・環境問題の解決に貢献しています。開発を志す人々のキャリアの選択肢に、国際機関やNGOに加えて民間企業が加わり、より多くの人が 開発の仕事と家族や自身の生活を両立できる日も近そうです。

 


[1] 投資を通じた社会貢献

[2] 持続可能な開発を通じた生活向上を目指すインドのNPOであるSwitchONからスピンオフしたベンチャー。

[3] 米国で2006年に設立。ビジネスを通じた社会貢献を社会現象化することを目指し、アキュメン・ファンドやロックフェラー財団等と恊働して「IRIS(インパクト・インベストメント報告・投資基準)」を作成。国連関係者等の開発専門家及び研究者が監修したBインパクト評価基準200のうち、80を獲得した企業(郡)がBコープの認証を受ける。

[4] 米デロイト社によるミレニアル世代を対象にした調査において、77%が「企業のミッションが就職先決定の一因」と回答。

[5] 米経済学者のM・クレーマー及びM・ポーターが、2011年1-2月号のハーバード・ビジネス・レビューで提唱した経営戦略のフレームワーク。戦略的CSRの考え方を発展させ、 社会課題をビジネス機会ととらえ、中長期的な利益創出と社会的価値の創出を両立させることで企業競争力を向上するという考え方 。

[6] 2015年7月17日筆者が実施したB Lab Andy Fyfe氏へのインタビューに基づく。

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