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国際協力の資質、開発途上国の援助に必要な専門性とは?

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国際協力に必要なスキルや資質は1つではない

国際協力を仕事として生きていくためには何が必要ですか?開発途上国の援助のプロになるための資質とは何ですか?これまで、このような質問をたくさん受けてきた。正直なところ、「なんだろう?」と、そのたびに考えさせられるのが本音だ。聞かれるたびに、私の回答が異なるものだから、聞いている方は困ってしまうかもしれない。要するに、決まった答えはないということだと思う。

今、この質問をされれば、こう答えるだろう。必要とされる専門性や資質は、国際協力のどの分野、どの組織で働くかによって変わってくる。

気付けば早いもので、私もNGO、二国間援助機関(JICA)、国際機関(ILO)と渡り歩いてきた。それぞれ全く違う仕事に携わり、全く違うロジックと視点での仕事だった。今日は、私の経験を通じて感じた「感覚的な話」をしたいと思う。これからキャリアを考えている方の役に立てばうれしい。

 

国の専門と地域の専門

国際協力を生業としようと思い立つときに、何を専門に生きていくべきか考えることとなる。カンボジアやケニアといった個別の国の専門か。アジアやアフリカといった地域の専門か。これほど単純ではないが、今日はこの2つに絞って考えたい。

いろいろな意見があって良いと思うが、私は「国の専門」には懐疑的だ。結局のところ、私たちは、外国人として開発事業に携わるしか残された道はない。どんなに頑張っても、「カンボジアの専門家」を目指したところで、カンボジア人には敵わないからだ。

たしかに、カンボジアに「ほぼ」永住して特定分野の専門性を生かして活躍している人はいる。これは、教育の未発達な国で、その国の事情は知っていても経済・社会・セクター分析をしっかりできる専門家が少ないことが原因だろう。しかし、優秀な現地のプロフェッショナルがいれば、外国人の私たちの役目はなくなる。

「国の専門」が成り立つ条件は、ただ一つしかない。カンボジア人よりもカンボジアについて詳しくなることだ。カンボジア人の中にも地方へ行ったことがなかったりその分野での経験が浅かったりということで、旅費が潤沢に使えたり勉強へ投資できるドナー国の職員にアドバンテージがある。そのため、一時的に「国の専門家」が生まれる。

しかし、より優秀な人材が開発途上国で育ってくることを考えれば、国際協力を生業として生きていく私たちにとって「国の専門」は現実的ではない選択肢だ。

 

二国間援助機関と多国間援助機関で専門性が異なる

「地域の専門」へ広げると話は変わってくる。「国の専門」はその国の人にはかなわないが、アジア地域の専門ということであれば事情はだいぶ違う。タイの経験をカンボジアへ。カンボジアの経験をベトナムへ。といったように、政策や事業の事例を他国へ共有することができる。国を跨いだ専門性の共有が外国人の私たちに求められる専門性なのだと思う。

ただ、勤め先が二国間援助機関(バイラテラル)と多国間援助機関(マルチラテラル)では、また事情が異なる。ちなみに、二国間援助機関とは日本でいえばJICA。多国間援助機関はUNICEFやILOといった国連機関をイメージすると良い。

二国間援助機関の場合、「日本の経験や技術を開発途上国の発展に活用する」ことが大きな強みとなる。JICAの例で説明すれば、プロジェクトを実施する際には日本国内で専門家を雇い、現地へ派遣することとなっている。一方、多国間援助機関の場合、「自国の経験」というのがないので、必然的にA国の経験をB国へ活用することが専門となる。

 

専門分野によってアプローチが異なる

これがまた、専門分野がインフラか社会政策かで大きくアプローチが変わってくる。

インフラ事業の場合、先進国が先進的な技術を持っていることが多く、先進国の知見や技術が開発途上国の開発事業へ直接応用できることが多い。しかし、社会政策の場合、必ずしも先進国のモデルが先進的でないことも多い。例えば、情報通信技術(ICT)の急速な発展によって、固定電話をすっ飛ばして携帯電話やインターネットが開発途上国で普及している。当然、開発事業も先進国が経験しなかったプロセスを経ることとなる。社会保障給付を現金ではなく電子送金で行うことは途上国で一般的になりつつあるが、先進国ではモバイルバンキングの活用は進んでいない。また、メキシコやブラジルで生まれた条件付現金給付(Conditional Cash Transfers)をニューヨーク市が貧困層支援に応用した話は記憶に新しい。

このように、一概には言えないが、分野によってもある程度専門性の考え方は異なるかもしれない。さらに細かく話をすれば、まだまだネタはありそうだが、また別の機会に書きたいと思う。今日はこの辺で。

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