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富裕層の消費を減らさずにSDGsは達成できるのか?

Photograph: CPAN
Photograph: CPAN

ある意味、持続可能な開発目標(SDGs)は野心に満ち溢れたものだ。国際機関はようやく貧困撲滅について真剣に考え始め、不平等の是正についても取り組もうとしている。ミレニアム開発目標(MDGs)にはなかった環境や気候変動に関する取り組みも明記されている。

しかし、ターゲットやゴールについて考えれば考えるほど混乱するのはなぜだろう。たとえば、不平等の是正(ゴール10)と消費・生産性の向上(ゴール12)を同時に達成するにはどうすればよいのだろうか。それは魔法でしか行き着くことのできない理想郷なのかもしれない。世界の人口は順調に増加していく中、環境への負荷を抑えつつも消費を増大させていく。そんなことは可能なのだろうか。

私にとって、貧困撲滅と不平等の是正が意味するのは、社会正義の必要性である。しかし、私はエコノミストではなく、これらの問題はエコノミストの分野である。最近見られる顕著な変化は、不平等に関するトピックが開発経済学のメインストリームに舞い戻ってきたことだ。トマ・ピケティのベストセラー「Capital in the 21st Century(邦題:21世紀の資本)」は、不平等の是正には税制と所得再配分が不可欠であると主張する。ピケティだけではない。ノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・スティグリッツポール・クルーグマンもまた、不平等が経済問題化すると主張している。実際に、不平等の是正が経済成長を加速化させるかもしれない。いずれにせよ、不平等への関心が戻ってきたことは興味深い。

貧困層がより良い暮らしをするためには、消費を増やさなければならない。栄養価の高い食事、質の高い教育・医療、きれいな水、エネルギーへのアクセス。SDGsが約束したこれらの目標を達成するためには消費を改善する必要がある。貧困撲滅までの道のりはまだまだ長い。しかし、達成したからといってどうなるのだろうか。消費増加=成功なのだろうか。1.25ドルの所得で生活できるのだろうか。もしあなたが「1.25ドルで生活することなどできない」と思うのであれば、なぜ私たちは彼らに1.25ドルで生きることを求めるのだろうか。

SDGsが示すように、最貧層の所得を底上げすること(ゴール1)は不可欠だが、それだけでは不十分。最底辺の40%が残りの60%の人々より早いペースで所得を増加させる必要がある(ターゲット10.1)。所得の増加は消費の増加を促すため、経済成長に良い影響がある。しかし、本当に持続的なサイクルなのだろうか。

持続可能な消費や生産は新しいアイデアではないにもかかわらず、様々な場面で「持続可能な(Sustainable)」という言葉が濫用される現状がある。これに対して、最近のインタビューでビル・イースタリーは不満を口にしている。「持続可能という言葉はあまりにも冗長的に使われ過ぎている。開発業界のあらゆる文脈でこの言葉が登場する。その結果、言葉の意味が骨抜きになり、無意味な用語となってしまった。」

私には、ゴール12に含まれるどのターゲットも問題の本質に切り込んでいるとは思えない。人類が大量消費をしながら自分たちが散らかした問題を片づけるのに苦慮しているのである。一握りの人々が他の人々よりも圧倒的に多く消費している。ゴール12のターゲットは、この問題を管理(Management)と責任(Accounting)という当たり障りのない言葉で表現するにとどまり、富の配分や政治といった本質には触れていない。私は富裕層の消費を抑制させるようなターゲットを探してみたが、SDGsからは抜け落ちてしまったようだ。では、なぜ抜け落ちたのだろうか。貧困層がもっと消費し、不平等は是正されるべきと誰もが考えているのに、なぜ。ここに呪術的思考(因果関係が正当化できない物事に原因を求める思考)があると思う。技術革新と効率性の追求への信頼は、消費し続けることの不安感を取り除き、貧しい人々をも大量消費社会の仲間に加えることができると信じさせる役割を果たしている。

「富裕層が消費を抑制し、貧困層が消費を拡大すべきだ」とするのは、政策の本流というよりはむしろ、アクティビズムや社会運動の考え方なのかもしれない。1991年、ロバート・チェンバースやゴードン・コンウェイが持続可能な生計アプローチについて論文を発表した。そこで示されたNet Sustainable Livelihoodsという考え方は、富の配分と消費バランスを考えるうえで重要な概念だった。私の開発業界での最初の仕事は、持続可能な生計アプローチに関するものだった。それから今に至るまで、消費にまつわる政治はとても難しい課題だと感じている。純生計という考え方が抜け落ちてしまっている。この問題を再び取り上げるチャンスをSDGsが見逃してしまったことが、残念でならない。

 

この記事はThe Povertist編集部が原文の一部を翻訳して掲載しています。

 

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