ルワンダ

JICAの貢献と今後の開発協力の役割-ルワンダ

Photograph: Kenshiro Imamura/JICA
Photograph: Kenshiro Imamura/JICA

ルワンダが目指す「知識基盤型経済」への道程に対して、開発協力はどう貢献していけるのか。まずはJICAが支援を再開してからの10年の実績を振り返ってから、今後の役割を考えてみたいと思います。

2005年に対ルワンダ支援の現地拠点を再開した時点では、JICAの支援の大きな柱は、紛争後の社会で人々が職を得るための人材育成と、帰還民を大量に受け入れた東部県の地方開発でした。その後の10年間で、支援の内容は、紛争後の復興支援から、持続的な経済・社会開発へと大きくシフトしました。現在の日本政府の対ルワンダ支援重点分野は、経済インフラ(電力・運輸)整備、所得向上を目指す農業、安全な水・衛生、人材育成・教育、の4分野です。

 

新しい産業構造を目指して

人材育成・職業訓練の分野では、2007年の設立時からJICAが支援しているトゥンバ高等技術専門学校は、ICT、電気工学、代替エネルギーの3学科で現在までに1,489人の短大クラスの卒業生を送り出し、国内でも一定の評価を確立しています。パスカル校長はJICAとの協力の成果として、卒業生が手に職を付けられるよう、インターンの機会を設けたり、産業界からの助言委員会を設置し、卒業生の雇用者満足度調査を実施するなどして、「Hands-on」の技術を教えることで、雇用につなげていることを挙げています。

ICT産業の発展に対しても、JICAはトゥンバでの人材育成に加え、2010年から様々な支援を提供してきました。2012年にJICAが設立を支援したイノベーション・スペース「k-Lab」は、今や900名以上の登録者が参加するコミュニティに発展し、12社のスタートアップ企業が生まれました。日本での研修で日本の取組みを学んだ者も多く、クラリス(HeHe Labs Ltd.)も、JICAの研修員として神戸で約1ヶ月間、「社会問題へのICTの活用」の研修コースに参加した経験があり、その時学んだ方法で、ルワンダの高校生や大学生の起業を支援しています。ABEイニシアティブ(アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ)等の取組みで、これまでにICT分野で18人のルワンダ人がJICAの支援で日本に留学しており、彼らが将来は日本企業とも連携して、ICTを中心に民間セクターの発展に貢献すると期待されています。

 

援助を有効に活用した発展

Photograph: Kenshiro Imamura/JICA
Photograph: Kenshiro Imamura/JICA

しかし、ルワンダのこれまでの発展を支えてきたのは、そうした新しい産業ではなく、援助資金を有効に活用し、地方部を含めた基礎的なインフラ整備を進めたことによる、経済全体の底上げであったろうと思います。JICAでも変電所・配電網の整備を中心にした電力の安定供給、道路の整備といったインフラ整備への支援を続けてきました。特に地方部における安全な水へのアクセスのための地方給水施設の整備、その維持管理体制確立のための技術協力は重要な柱であり続けています。農業を通じた農民の所得向上への支援も長年続けられてきました。それらの支援は、国全体の電力・水へのアクセス向上につながると同時に、技術者の能力向上、農民の所得向上といった個人レベルでの生活向上にもつながっています。開発協力を通じた社会全体の発展が「知識基盤型経済」への移行を支える基盤を整えてきたはずです。

 

これからの開発協力

ルワンダは、今でも農業が就業人口の7割以上・GDPの3割以上を占め、輸出品は鉱物とコーヒー・紅茶が主流と、産業構造の変化はまだ限定的です。しかし、過去10年間の人材育成・インフラ整備への投資によって、産業構造の転換への基盤が整い、次の10年は、新しい発展の形に移る段階だろうと思います。この転換にあたり、民間セクターやICT起業家の活力を活かしつつ、これまでのように貧困削減を伴う発展を続けられるか、そこに開発協力のこれからの役割が問われることになるでしょう。

ルワンダは2015年時点でのMDGsの達成状況が良好ですが、パネル・ディスカッションでは参加者の多くが、2030年に向けて、今度は「持続可能な開発目標(SDGs)」を達成していかなければ、と発言をしていました。その中でも「誰も取り残さない(leave no one behind)」という原則が、強く意識されています。2016年、ルワンダでは、SDGsを達成するための国家開発政策の見直しが行われ、新しい長期計画「VISION 2050」の議論も始まる予定です。

今回の10周年記念イベントは、JICAの企画に様々なパートナーが応えてくれたことで実現したものでした。異なる立場からのコメントを集めたパネル・ディスカッションは、様々な見方を共有することで、国全体の方向性を考える良い機会となりました。開発協力は、技術や資金の移転だけでなく、こうした知識を共有する場の提供にもつながり、国の発展の触媒になることを改めて感じることができました。今後の10年間、引き続きJICAは日本とルワンダとつなぐ触媒でありたいと思います。

 

 

  (JICAルワンダ事務所次長 室谷龍太郎)

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