マラウイ

アフリカ南部、マラウイ農村の保育園運営に奔走する若者たち

Preschool, Malawi日本の保育園では、近年待機児童が問題になっているが、マラウイの村の保育園(ナーサリースクール)はどんな問題を抱えているのか?今回は政府やNGOの援助が多く入っているプライマリースクールやセカンダリースクールではなく、あえて援助の中心となっていない幼少教育の保育園を取り上げたい。

マラウイの保育園は、日本の保育園みたいに遊具も積み木も綺麗な校舎もない。そんな問題に向き合い、マラウイの田舎で保育園運営に翻弄するマラウイ人の若者たちがいる。

 

マラウイ農村の保育園

保育園があるのは、首都から200km離れた地方コタコタの中心から、さらに20Km離れた所にあるンパマンタ村。しかし、田舎町と思いきや、人口17,422人(2014年時点)が住む意外と大きな村だ。この街には、5歳以下の子供たちが2,962人(2014年時点)いるが、その中でも保育園に通えているのは一握りに過ぎない。

校舎は藁葺き屋根。地面は土。雨が降れば雨漏りし、風が吹けば寒すぎて、雨季はほとんど校舎内で授業ができないほど。こんな校舎だが、ここにはンパマンタ村の子供たち2〜6歳が50人も通っている。

保育園運営に奔走する若者たち

そんな保育園を運営するのは、村の有志の若者たちYouth Organizationのメンバーだ。彼らのほどんどは、定期収入が少ない貧しい村人。彼ら自身でお金を出し合い運営しているため、基本資金はほとんどない。

例えば、マネージャであるMさんは、自身が貧しくて中学校を中退したのに、中退後、村のために保育園運営に全力を注いで活動している。先生は基本は村人のボランティア。給与などは払われていない。先生もバックアップするスタッフも、すべて村人の頑張りでなりたっているのだ。

貧しくても、他の人にも与える文化が染み付いている。そんなマラウイ人の温かい気質があるから、成り立っているのかもしれない。

また少ない運営資金をやりくりするため、さまざまな活動を自発的に行っている。例えば、自分たちの村でディスコのイベントを開き、入場料を活動費に充てたり。支援してくれるNGOを探して、給食のおかゆの材料メイズを買ってもらったり。基本資金不足であるので、常に運営資金を探しているのが現状だ。

貧しくても、高い教育レベル

このように、村の若者たちによってぎりぎりで運営されている保育園。お金も物もなく貧しいが、教育はとても行き届いている。

特に英語に対しての教育レベルが高い。なんと生徒達ほぼ全員が、A〜Zのアルファベットや、月(1月〜12月)と曜日(月〜日曜日)も英語で言うことができる。

授業の様子(2016.7)
 

6歳以下の子供でここまで英語が言えるのは、日本の保育園でも中々ないだろうと思う。

英語が話せるか話せないかで、良い仕事が得られるかどうかが決まってしまうマラウイでは、幼少の時から英語に触れ合うことは、とても意味のあることだ。村で英語を話せるひとは、高い教育を受けられた実際一握りのひとだけ。小さい頃から英語が身近にあることで、将来彼らの未来が少しでも良くなる可能性がある。

時間割-英語の他に算数も教えている。
時間割-英語の他に算数も教えている。

また、授業終わりには朝(昼)ご飯も配っている。食料不足・貧困で栄養失調の子供が多い村では、一回のご飯はとても重要。給食がでることで、子供達が栄養不足になることを防いでいる。

「教育」+「栄養補給という重要な役割を、幼稚園は担っている。援助大国であるマラウイは「もらう文化」が社会に染みついているようなマラウイ。だが、彼らYouth Organizationはお金や物がないことに甘えず、質の良い教育を子供にしている。

今後のプロジェクト

今後、Youth Organizationは4つの活動を行おうとしている。

保育園校舎の再建設

今にも飛んで行きそうなぼろぼろの校舎の再建設プロジェクト。現在は、村人が自分で立てた藁葺き屋根とレンガ作りの小屋で授業を行っており、雨が降れば雨漏りし、風が吹けば寒すぎて、全く授業ができない。そのため、雨季はほとんど授業がなくなってしまう。

また泥だらけの土の地面を触った手で、ご飯を食べているので衛生面でも問題がある。6歳以下の小さな子供たちには、過酷な環境だ。

そんな校舎を再建してより良いものにしようと、Youth Organizationメンバーは、現在校舎の再建設を行っている。

完成予定はこんなイメージ。2016年8月今月から建設スタートだ。

村の図書館作り

市の中心から20Km離れたンパマンタ村には、図書館が一つもない。また本屋もほとんどないので、村人にとって活字に触れる機会はとても少ない。

活字に触れる機会が少ないということは、1)外の情報に触れる機会が少ない、2)識字できるひとが少ないという原因になる。

実際、コタコタの成人の識字率は約60%であり、10人に4人の大人は、文字を読んだり書いたりすることができない。こんな状況を改善しようと、幼稚園に全ての村人が利用できる図書館を作る予定だ。

運動用具の拡充

物がほとんどない幼稚園。サッカーボール、なわとびなど運動用具はおろか、積み木や色鉛筆、黒板なども、まったくない。

授業はいつも物を必要としない歌や手遊びだけ。もし、サッカーボールがあれば子供達の身体能力はもっと向上するかもしれない。もし、黒板があれば、子供達はアルファベットを音だけでなく、書き方を習うことができる。

幼稚園で使える物資を拡充するプロジェクトを行う予定だ。

アートクラスの開催&絵画コンクールへの参加

子供たちが描いた絵
子供たちが描いた絵

日本では保育園でお絵かきをするのは当たり前だが、ンパマンタ村では、ペンと紙がなくてお絵描きをする機会はほとんどない。

お絵かきをすることで、子供の想像力を鍛えることができる。村の子供たち向けにアートクラスを開き、絵画コンクールに参加して達成感を味わう経験をしてもらいたい。

そのような気持ちから、8月よりアートクラスを開始している。

貧しくても村のために頑張る若者達。このような自国のために行動できる若者が増え、彼らが活躍できる社会になることが、マラウイの国が発展するために重要なのだと思う。

彼らの活動が報われることを願っている。

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