インドネシアは現在、社会保障制度の方向性について重要な岐路に立っている。国家開発企画庁(Badan Perencanaan Pembangunan Nasional: BAPPENAS)が策定し、ジョコ・ウィドド大統領が2024年の退任前に承認した国家長期計画(Rencana Pembangunan Jangka Panjang Nasional: RPJPN)では、2045年までの20年間でインドネシアが目指すべき方向性が示されている。
東南アジア
インドネシアの社会保障制度と再分配の構造的課題
インドネシアの社会保障制度において、生活保護制度は極めて大きな割合を占めている。この生活保護制度は2000年代から始まり、現在では年間約1000万世帯が受益している。平均的な家族構成を5人と仮定すると、約5000万人が生活保護を受けていることになる。これは世界最大規模の生活保護制度といえ、社会保障財源の税財源の約20〜25%が当てられている規模の大きな国家プロジェクトである。
インドネシアの政策対話と社会構造の課題
インドネシアは2023年に65歳以上の人口が全人口の7%を超え、国際連合人口基金(United Nations Population Fund: UNFPA)の定義による「高齢化社会」に突入した。多くのインドネシア人やメディアは依然として「人口ボーナス」を語り続けているが、財務省や人口動態を研究する専門家の間では危機感が広がっている。推計によれば、インドネシアは2045年頃に高齢者人口が14%を超える「高齢社会」へと移行する見込みである。
インドネシアの政策形成における独自路線志向と国際基準との乖離
インドネシアにおける政策形成過程では、国際基準や他国の事例よりも国内情勢が優先される傾向が強い。数百回に及ぶ政策対話の経験から見えてきたのは、人口大国としてのインドネシアが国際情勢の論理をよりも、自国の国内事情を最優先させる姿勢である。
メーデーでインドネシア大統領が約束した3つのこと、アウトソースの禁止など
2025年5月1日、インドネシアのプラボウォ大統領がスカルノ大統領以来初めて現職大統領としてメーデーの全国集会に参加し、注目を集めている。労働組合の幹部やメンバーが集まる場で行われたスピーチでは、労働政策に関する3つの重要な約束が表明された。
なぜ縫製業はインドネシアからベトナムへ移転したのか?社会保障の観点から
インドネシアの現在の市場環境は、社会保障の観点から縫製セクターに重大な課題をもたらしています。特に労働集約型産業において、国際的な市場におけるインドネシアの競争力に対する懸念が高まっているようです。特に労働集約的な女性を雇用する縫製セクターは、2024年12月に実施された最低賃金の引き上げの影響を受け、これらの産業は人件費増加に直面しました。
課税から再分配へ:国民皆年金がインドネシアの中産階級を救う可能性
持続可能で包摂的な成長を達成するために中間層を拡大することに焦点を当てている政府の長期開発計画を考えると、インドネシアの中間層の減少は特に懸念される。 中間層は政府の戦略の中心である。
インドネシアの雇用保険制度改革に対するILOの政策提言
金曜日。労働省から来週の面談依頼が入った。社会保障を管轄する局長からの連絡で、国際労働機関(ILO)の雇用保険改革に関する分析と提言について聞きたいとのことだった。
急速な高齢化に直面するインドネシア―年金制度改革の課題と展望
インドネシアの人口は現在2億7,000万人。今後30年で3億3,000万人まで増加する見込みだ。労働年齢人口は1億5,000万から1億7,000万人ほどで、政府は「人口ボーナス」を経済成長の機会と捉えている。
インドネシア、産休6ヶ月制度化へ―実効性は社会保障制度の整備がカギ
インドネシアで女性と子供の福祉に関する新しい法案が可決された。通称KAI法案だ。この法案は2、3年前に国会に提出されたもので、女性省を中心に関係省庁や労使団体とのパブリックコンサルテーションを重ねてきた。