カメルーン, 国際

お気に入りの仕立て屋へ-アフリカの商業のあり方とは?

仕立て屋さん Photograph: Saki Ito
仕立て屋さん
Photograph: Saki Ito

ヤウンデの街を歩くと、日本のようなしっかりとした佇まいであることは稀であるものの、色々な店、職人を見かける。番地はおろか通りの名前も無いことが珍しくなく、「住所」の概念があまりないこの国では、労働力の90%がインフォーマルセクターで生計を立てていると言われている。道を歩くと飲食店はもちろん、日用品を売るキオスク、車の修理工、園芸屋、家具屋、水タンク屋(断水に備えて貯める)、・・・そして仕立て屋をよく見かける。

日本にいたら普段着のオーダーメイドなんて考えもしないが、カメルーンを含め、サブサハラアフリカでは仕立て屋にお願いするのがいたって普通だ。布問屋街周辺や、少し中心地から離れると、サンプルを店先に出していたり、店先で作業していたりする仕立て屋をよく見かける。もちろん、どこでも同じというわけではない。体の線が強調されるコテコテのアフリカンデザインを得意とする人、モダンな服を作る人、シンプルなワンピースをお願いしても色々とオプション(ボタン、刺繍、フリル等)を付ける人、ちょっと端の処理が甘い人、などなど。私のもっぱらの行きつけは、端の始末が綺麗で、小物も含め、何でも作ってくれる凄腕の工房である。

この先に仕立て屋が・・・ Photograph: Saki Ito
この先に仕立て屋が・・・
Photograph: Saki Ito

ヤウンデ生活は口コミが非常に大事。なぜならインフォーマルな商業の多くはウェブサイトも持たず、大したマーケティングを行う術を持っていないからだ。この仕立て屋さんも人に紹介してもらった場所。正直、紹介してもらわないとこんなところに良い仕立て屋がいるとは想像もできない、地元民居住地区の細い路地を入ったところにある。入り口にミシンが4台ほど、そしてその奥のリビングのようなところに、大きなテーブルと小物等の既製品が並べられた棚がある。

いつもワンピースやポーチをお願いするのだが、今回は浴衣をここの布で作ってもらった。注文する時は見本に、日本から持ってきていた浴衣を置いていく。ワンピース等も、もちろん既存のものを指定の布で作ってもらうこともできるし、写真どころか落書きのようなイメージ図からでも素敵な実物を作ってくれる。生地持ち込みで、スカートだけなら600円、ワンピースで1000円。しかも、仕事が速い。基本的に、どんなに大量に注文しても、一週間後、次の週末には出来ているのだ。ただ、運悪く電力供給が不安定な時期だと、ミシンが動かせず仕上がらないこともあるが、これはカメルーンでは仕方のないことである。

浴衣 Photograph: Saki Ito
浴衣
Photograph: Saki Ito

彼のところには、他の日本人はもちろん、欧米人の常連も来ているようで、行く度に他の客の注文品がある。結構儲かっているんじゃないかと思うが、この1年、デスクトップパソコンが新たに設置された以外、彼の生活に大きな変化はない。寡黙に働く彼と家計の話をしたことはないが、時々訪問時に宿題に取りかかっていたりする子供たちの教育にお金をかけていたりするといいな、と願っている。

こんな彼ももちろん、登記等はしておらず、インフォーマル。登録すれば税金が徴収される一方、彼にとって特に大きなメリットはないだろう。前述の通り、仕立て屋だけではなく様々な商売が登記されていない、インフォーマルセクターにあたる。このままで良いのか、いけないなら登録するインセンティブは何か、住所のないこの国で、インフォーマルセクターの商店を「登録」し管理していくことは本当に可能なのか・・・。こうして大好きな布問屋、仕立て屋を巡っては地元民の「現実」に触れ、アフリカの商業のあり方と今後などに思いを馳せながら過ごすのが、私の週末である。

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