国際

2030年の援助

Photograph: UNHCR

2030年はしばらく先のように感じられるが、私達が持続可能な行動が求められるいくつもの危機に直面していることを考えると、そうではない。

2015年にミレニアム開発目標がある程度成功した後に国際社会が持続可能な開発目標(SDGs)へのコミットを約束した際、世界はよりよいものになると予想された。しかし、2030年を目標達成年とするSDGsを通じて持続可能な世界を実現するには試行錯誤や課題が懸念される。人道援助関係者のプラットフォームであるIARANが発表したThe Future of Aid INGOs in 2030という報告書は長期化・複雑化した紛争、非自発的な移民の増加、激化する自然災害、拡大する格差といった増大する課題を予測している。対して、NGOが直面する課題や彼らの役割はすぐに低減するとは思われない。

2030年はしばらく先のように感じられるが、私達が持続可能な行動が求められるいくつもの危機に直面していることを考えると、そうではない。人道危機・援助を取り扱っているウェブサイトであるIRINは「2019年に注目すべき10の危機」を挙げ、これには「自発的な」帰還難民・人道危機にある国々における感染症の再発・NGOへの反テロ対策順守の強制・アフリカにおける武装勢力の存在の継続が含まれる。これらの課題には複雑な背景と原因が存在するが、政治的意思の欠如が解決に大きな影響を与えている。

関連しあう課題

パキスタンはタリバンとの戦いで荒廃しているアフガニスタンへの難民の帰還を促進しており、2016年以来、80万人以上の人々がパキスタンを離れた。バングラデシュは約100万人のロヒンギャ難民を彼らがジェノサイドを経験したミャンマーに帰したがっている。帰還した人々の多くにとって、故郷に戻っても自宅や土地が荒廃している、ないし没収されていることを知るのみであるのは大きな問題だ。帰還難民は社会サービスや安全が限られた状態で一から生活を建て直さねばならないか、他国による受け入れを模索せねばならない。

また、サヘル地域では政府の脆弱なガバナンスが「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ」などの武装勢力との戦いが功を奏しない主要因だ。このことはまた適切な社会サービスを提供することを通じて人々が政府を支持し、彼らが武装勢力に取り込まれないようにすることを妨げている。こうした背景により、被援助国は武装勢力への支援と彼らが見なす援助を削ぐためにNGOに対して厳しい「反テロ」規制を適用する。他方、援助国は援助が最終的に武装勢力の手に渡らないことを確実にするためにNGOの資金の流れに対する把握と規制を強化しようとしている。

こうした課題はすべて関連している。人々は紛争や疾病に苛まれた国々から脱出するが、結局のところ、適切な社会・保健サービスが欠如し、政治的・経済的に不安定な祖国に送り返される。逃れた人々を受け入れる国々はそうした人々がタリバンのような武装組織に関わりをもっているのではないかと疑い、これを彼らの送還や彼らを支援しているNGOの規制の理由とする。

こうした背景において、さまざまな課題に取り組もうとする国際社会の一致した意思や努力の欠如は懸念されるものである。国連人道問題調整事務所(UNOCHA)は昨年、必要な資金250億ドルのうち6割ほどの150億ドルしか集められなかった。世界的なナショナリズムの高まりも原因だろう。最近まで主要な国際的モラルリーダーであり、人道支援ドナーであった米国のトランプ政権による孤立主義への変節――パリ協定からの離脱・難民や庇護希望者の保護の門戸を狭めたこと・グローバルなリプロダクティブヘルスへの援助予算削減といったものが具体的に挙げられる――は恥ずべきものである。

リスクコンサルティング企業であるユーラシアグループはグローバルリーダーシップの不在(Gゼロ)や米国の政治的不安定性・欧州でのさらなるポピュリズムの伸長・ロシアやトルコなどの国々によるグローバル自由主義への対抗勢力化といった「2019年の世界10大リスク」を発表している。他方、中国の脆弱国に対する経済的影響は強力だ。こうした傾向は不安定な被援助国が人権保護を重視せず、人権侵害を促進することに加担するものと懸念される。

懸念すべきことは多くある

The Future of Aid INGOs in 2030は将来の援助に影響する4つのシナリオを提示している。そのうち最も起こる可能性が高いと予測されているものはナショナリズムの高まりがグローバルなガバナンスの低下を引き起こし、人道援助システムが特に慢性的に脆弱な地域で危機の政治化により圧力を受けるという「狭き門(narrow gate)」である。このシナリオでは人道援助への管理と規制の強化、「西洋中心主義的」とするNGOへの不信の増大、援助を必要とする人々へのアクセスの確保をビジョンや価値と引き換えにする妥協を探らねばならないこと、こうした人々へのアクセスが制限され、国際NGOの役割が現地政府・NGOのそれに比して低下することが挙げられている。

このことは相互対話・理解の余地がほとんどない政治レベルのNGOへの猜疑が声をもたない脆弱な立場に置かれている人々を取り残す危険性を孕んでいる。2016年の世界銀行報告によると、アフリカでは貧困率が減少しているものの、人口増加によって極度の貧困状態にある人々の数は増え続けている。他にThe Future of Aid INGOs in 2030が取り上げる援助への政治的影響の例は軍の人道援助へのさらなる関与である。これは軍関係者と援助関係者の垣根をさらに曖昧にし、NGOの中立性・公平性・独立性を脅かし、紛争の被害者の支援と保護を損なうことにつながる。国際法によって十分に規制されていない民間軍事会社のさらなる関与はNGOも巻き込み、これらの安全を損なう恐れも生じさせる。援助はより持続的なものでなくなってくる。

SDGsはNGOを含むさまざまな関係者の一致した努力によって達成されねばならない。NGOは国内的・国際的に資金や活動へのより強化された規制に晒されるが、変化する状況に臨機応変に対応して主要な役割を果たさねばならない。政府が人権保護に消極的であれば、NGOが善意の市民社会による支持と団結をもって人権を保護すべきだ。

「誰一人取り残さない」というSDGsの約束はアドボカシーの核であるべきで、NGOはこのアドボカシー実施の一員とならねばならない。NGOは自分達の声や懸念を響かせ続けねばならない。一つひとつの声はかき消されるほど小さかろうと、これが集まれば大きなものとなる。まだまだやらねばならないことが多くあるのだ。

この記事はFair Observerに掲載されたものです。

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