マラウイ

アフリカ南部マラウイ農村での収入向上の課題

マラウイの農民が自分でビジネスを始めるうえでの6つの課題

低所得者が収入向上するためには、自分でビジネスを始めるしかない(レアケースを除く)。では、ビジネスを始めるには何が課題となっているのか。マラウイ中部コタコタ県のケースをもとに考えてみたい。

1.チャネルの少なさ(物流の悪さ)

logistics-malawiマラウイに存在する問題で大きなものが物流の悪さ。マラウイは幹線道路が主に2本しかなく、その幹線道路沿いに町が点在している。特にコタコタの中心街は一番の主要道路「M1」沿いにないので、他の町へのアクセスも悪い。また、農民のほとんどが交通手段(車はもちろん、自転車ですら)を持っていない。近くの町に移動するための公共交通手段「ミニバス」の乗車賃も高くて払えないこともしばしば(例えば、ミニバスの料金約40-50km、500KM(約71円)も払えない)。そんな彼らにとって、ビジネスのために移動したり、ものを運んだりするというのは、大きな壁。物流にアクセスできないがゆえに、農民は不利な立場に立たされている。

例えば、コタコタ県では以下のようなことが起きている。

(例1)マンゴーのたたき売り

暑い地域でしか採れないマンゴー
暑い地域でしか採れないマンゴー

コタコタ県では腐るくらいあるが、他の地域に持っていけば売り物になる。ただ、農民たちは交通手段がないので、自分で売りに行くことができない。そこで、仲介者がコタコタ県から都市にマンゴーを運んでがっぽり儲ける仕組みになっている。

仲介者は農民からマンゴーの木1本につき3,370MKで買う。1本の木にマンゴーが300個なるとしたら、300個×100MK=30,000MKで売れる。つまり、農民は木1本につき3370MKしか稼げないのに対し、仲介者は、 30,000MK-3,370MK=26,630MKも稼げるという仕組み。

交通費を考慮しても、仲介者がかなり儲けている。農民たちはその事実に嘆いているが、交通費が高すぎるのでどうすることもできない。

(例2)新鮮な魚が格安で売られる

マラウイ湖沿いでは新鮮な魚が手に入るが、少し湖から離れると新鮮な魚はあまり売っていない。この地理条件を活かして魚を他の地域に売れればきっとコタコタ県の収入は増えるが、物流の問題があり、やろうとする人はいない。物流が整備されていれば、コタコタ県の漁業関係者は収入がアップするは確実だ。物流網の脆弱性はマラウイのビジネスで無視できない問題となっている。

2. 選べない顧客セグメント(高所得層が遠くアクセスできない)

コタコタは大都市から距離があるため、大都市に住む高所得層へのアクセスが難しい。途上国マラウイでの高所得層の多くは、都市部に住んでいる。また、お金を持っている外国人も多くは都市部か観光地にいる。

1.で述べたように、多くの農民は移動にお金を使うことができないため、都市に住むお金持ちのマラウイ人や外国人をターゲットにするのが難しい。ビジネスでは基本的にお金を持った層を顧客ターゲットにするのが普通だと思う。その分、コタコタ県のような農村部はビジネスにおいて不利にならざるを得ない。結局、彼らが顧客にできるのは同じ地域に住んでいる同じ所得水準の人。外からお金が来ることもなく、貧しい地域内でお金をぐるぐる回している状態。地域のお金の流通量が少なく、収入増加の壁になっている。

3.限られたリソース(投資ができない)

money-malawiその日暮らしをしている低所得者。数か月・数年先を見越して、投資できるような経済的余裕がある人はあまりいない。そんな状況を改善するため、ビジネス組合を作り、少しずつお金を持ち寄ってビジネスを行ったりしている(ビジネスグループCOMSIPや、貯蓄グループVSLAsがこれに当たる)。先進国と違って、銀行利用には大きな障害と多額の利子がかかるので、銀行以外のお金を融資してくれる先を探すのが重要となる。

4. 識字・計算能力の低さ(コスト管理ができない)

低所得者層の多くは十分な教育を受けられないまま大人になることが多い。ビジネスをするうえで、識字や計算ができないのは致命的。簿記を付けられないので、コスト管理ができず赤字になってしまったり。文字が読めないので、新しい情報を取り入れられなかったり。知識を補うために、NGOが様々な講義を開いている。勉強しなおすには相当な時間がかかる。今、お金を必要とする農民にとって識字や計算の問題は大きなディスアドバンテージだ。

5.情報アクセスの不利さ(入ってくる情報が少ない)

低所得者のほとんどはテレビや新聞などにアクセスすることができない。持っていてもラジオ。携帯電話ですら持っていない人が多い。そうなると彼らが情報を得る手段は、「知り合いの人に聞く」のみ。そのため、同じ地域にいる人から情報をもらい、みんなが同じビジネスをする。新しいことに挑戦しようという、イノベーションが生まれにくい。

6.争わない慣習(競争意識・差別化意識がない)

同じピーナッツを同じ値段で同じ場所で売る
同じピーナッツを同じ値段で同じ場所で売る

マラウイは「Heart of Africa」と呼ばれる程、心優しい助け合いの国。これは住むにはとても良い環境だが、ビジネスでは時にマイナスに働く。例えば、マラウイの市場では、ほとんどの物が同じ値段で、同じ場所で売っている。商品を差別化したり、他と競ったりする習慣があまりない。お客さんに手に取ってもらうため、いかに他社製品と差別化するかを考えている日本の環境と比べると、異様であることが分かる。

マラウイ人の友人に聞いたところによると、「同じ場所で、同じ値段で売るのがあたりまえ」らしい。「お客さんがほかのお店のトマトを選んだら、それはしょうがない(神様が選んだのだから)」とのこと。これでは、ほかの店より良い商品を作ろうというモチベーションがわかない。これはマラウイの文化に関わることなので、変えていくのは本当に難しいと感じる。

 

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