ベトナム

新たな価値への挑戦、ベトナム山岳地帯モン村におけるオレンジ加工製品の開発

Photograph: Kuniharu Yamada

ベトナム西北部、ホアビン省カオフォン郡モン村におけるオレンジ農家の精力的な取り組みを、JICA青年海外協力隊としてベトナムの農村開発支援NGO「VIRI」で活動中の山田邦永が紹介する。

ホアビン省カオフォン郡モン村とは

少数民族の住む自然豊かなモン村

ホアビン省はベトナムの北西部に位置する山岳地域である。カオフォン郡はホアビン省の中央付近に位置し、北にベトナム北部の水がめであり水力発電所への水の供給源であるホアビンダムがある。モン村(地図)は、美しい空、澄んだ空気、透き通った水、適度な高度の揃った美しく快適な村で、かつては少数民族ムオン族の7家族が生活していたと言われている。現在では少数民族ムオン族及びタイ族の100家族400人以上が住んでいる。

ムオン族の伝統民族衣装
Photograph: Kuniharu Yamada

モン村の地形の特徴的な名前

モン村の地形には文化や伝統、生活を反映した名前が付けられている。

ヴァン丘:黄金の丘の意味。丘の頂上で紙幣を模した紙を燃やす儀式が行われることから。

マムソイ丘:大皿おこわの丘の意味。宗教の儀式の際にお供えする大きなお皿に盛ったおこわに似ていることから。

ジエム洞窟:マッチの洞窟の意味。かつてこの洞窟で起こした火を各家庭に持ち帰っていたことから。

ダン川:苦い川の意味。ベトナムでは世の中の物事を慣用的に「苦い・辛い・塩辛い・甘い」と呼び、苦い(苦労)、辛い(失敗)、塩辛い(努力)を経て甘い(成功)に至ると言われている。ダン川はモン村の水源、生活の源であり、苦労(苦味)は成功に至る大元であることから。

ヴァン丘からの眺め
Photograph: Kuniharu Yamada

ハノイ経済圏の後背地としてのホアビン省

ハノイ市からホアビン市へは約85km、車でわずか約2時間の道程であり、ハノイ経済圏の後背地として、将来に渡って発展していくことが予想されている。ハノイ市場における消費者の食の安全に対する関心が高まりつつあることを受けて、特に都市近郊型の集約的な農業で安全性の高い野菜を生産するために、ベトナム農業農村開発省も支援している。

モン村のオレンジ生産ハーフォン共同組合

ハーフォン共同組合のオレンジ生産の歴史

今から20年前、カオフォン郡モン村は、雑草と茂みに覆われた未開墾の丘陵地だった。ときに発生する土壌侵食を、藍を植えることで防いでいた。この地域に住んでいる少数民族ムオン族及びタイ族は、市場に広く受け入れられる農作物を作る方法も、丘陵地を開墾して活用する方法さえも分からず、低い収入で厳しい生活をしていた。このような状況にトゥ・クアン・ハー氏は危機感を覚え、ここでより多くの雇用の機会を創出し、また近い将来きっと生活が良くなるという希望を持たせることを決意した。そして2002年、資金や人員の調達に大変な苦心をしながらも、ハー氏は1つの丘の頂上へと繋がる最初の道を完成させた。モン村における自然の恵みを活用したオレンジ栽培は、ここから始まった。

モン村の丘を開墾する様子
Photograph: Tu Quang Ha

2015年、ハー氏はモン村の村民とともにオレンジ生産の「ハーフォン共同組合」を立ち上げた。ハーフォン共同組合の目指す姿は、新しい技術を積極的に取り入れながら付加価値の高いオレンジを栽培する、新たな協同組合である。ハーフォン協同組合のオレンジ農園では、有機的で環境負荷の少ない方法でオレンジが栽培されている。肥料には微生物肥料及び魚粕の有機肥料を使っている。また、イスラエルの灌漑技術で水を丘の上のタンクまで汲み上げている。

有機肥料を使ったモン村でのオレンジ栽培の様子
Photograph: Kuniharu Yamada

ハーフォン協同組合メンバーのストーリー

タイ族のトン・ヴァン・トアン氏は、奥さんのクアン・ティ・スオン氏と結婚した後、双子の子どもを授かり、モン村での生活を始めた。2人は長期のローンを組んで小さな家を建てたが、苦しい家計に返済状況が良くなかった。ローンを完済する明確な計画が持てなかったため不安に駆られていた頃、幸運にもハーフォン協同組合の一員となることができた。現在2人は毎月約5,000,000VND(約25,000円)の安定した収入を得られるようになった。毎月のローンの返済も進み、また子供の将来の学費も工面できるため、非常に前向きに希望をもって生活をしている。

Photograph: Kuniharu Yamada

オレンジ加工製品の開発に挑戦

継続して発展していける協同組合へ

ハーフォン協同組合では、今後より多くの村民の収入向上に貢献し、カオフォン郡の経済活性化を促進するべく、オレンジを使った加工製品の開発に挑戦している。製品開発にあたって、地方政府からの支援に加え、ベトナム国内外の各専門家からの支援も受けている。2018年5月には大分県より国際一村一品交流協会の内田正理事長がハーフォン協同組合を訪問し、一村一品運動の原理原則を説明していただく機会を得た。

左端:山田邦永氏、左から4人目:内田正理事長、左から5人目:ハー氏
Photograph: Kuniharu Yamada

VIRIの支援する新製品の数々

現在VIRIは、ハーフォン協同組合と協力をしながら、新たなオレンジ加工製品の開発を進めている。オレンジジュース、実を発酵させたオレンジ酒、オレンジピール、皮から抽出したエッセンシャルオイル等がある。ハーフォン協同組合は、2018年12月12~16日にカオフォン郡で開催された「Hoa Binh province Citrus Fruit Festival and Agricultural Fair 2018」に出展し、ハーフォン共同組合のレ・ヴァン・クオン氏がベトナムのグエン・スアン・フック首相へ新製品を直接紹介した。これらの製品がベトナムの首都ハノイ市内で販売されるようになったら、VIRI Facebookページで案内される。

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最後に

低価格競争に走らず、地域の特性を活かしながら、かつ、持続可能な形で高付加価値製品を生み出そうとしているホアビン省カオフォン郡モン村のハーフォン共同組合の取り組みは、学ぶべきところが多々ある。このような取り組みがベトナム全土のみならず、世界へ広がっていくことを期待する。

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