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日本はなぜ呟かないのか?コンプライアンスと広報の狭間

Photograph: Ippei Tsuruga
Photograph: Ippei Tsuruga

「日本は何をしているのかわからない」

開発業界で仕事をしていると耳にタコができるほど耳にする言葉だ。日本の援助は見えない。これが定説となって久しい。関係者はもちろん、広報活動に力を入れて、この汚名を返上したいと努力している。しかし、努力と結果は必ずしもすぐに結びつくものではないのだろう。

開発業界では、ソーシャルネットワークの活用が一大ブームとなりつつある。研究者、実務家が、ツイッターやフェイスブックの公開アカウントから生の声を届けるのが広報活動の主流となりつつある。日本はどうだろうか。残念ながらヨーロッパやほかの主要援助国の後手をいく。組織の公式アカウント以外に、実名でSNS等で情報発信している関係者はどれだけいるだろうか。諸外国の同業他社に比べるとアリとゾウほどの差がある気がする。

ではなぜ日本の開発業界ではSNSが広報の主流となっていないのだろうか。

この質問に対して私の考えを書く前に、紹介したい記事がある。5月18日に英国開発学研究所(IDS)のホームページに投稿された記事だ。IDSは世界の援助関係機関の中で、SNSを活用した広報活動で最も成功している機関の一つだ。研究成果や開発業界をけん引する議論の発信にSNSを積極的に使い、約140,000のFacebookフォロワーがいる。

広報部長のジェームス・ジョージャラーキスは、IDSの成功を次のように説明している。

IDSのニュースや活動内容に限定して広報活動を行ったことは一度もない。むしろ、他の団体が発信する記事や活動を定期的に紹介している。IDSの成功の秘訣は以下の6つ。

1. 全てのSNSチャネルを活用し、ニュースや記事を迅速に発信すること。BufferAppのような便利なツールも活用する。
2. 自らの記事だけでなく、パートナー団体の記事も発信する。
3. 同様の関心を持つ人々を見つけ、フォローする。
4. フォロワーからのメッセージへは迅速に回答する。
5. 特定の人々にターゲットを絞る(卒業生や同僚を通じてその友人等への波及効果)。
6. メディアポリシーを作成し、SNSで積極的に発信する職員を支援・保護する。

The Povertist立ち上げから運営を振り返ると、これらの考えに実感を持って同意できる。では、これらの成功要因を日本が真似できないのはなぜだろうか。経験則から言えば、コンプライアンスと広報活動の利害が対立しているためかもしれない。

つまり、日本の組織は次の壁に直面している。

  1. 新しいサービスの使用:組織が大きくなればなるほど、新しい試みへの対応は遅くなる。コンプライアンスと責任問題が常に大きな壁として立ちはだかる。もし新しいサービスを使うことで何か問題が起こった場合、誰が責任をとるのか。長い長い議論の始まりで、気の遠くなるほどの事務手続きを経て、こうしたサービスの使用許可が下りる。ツイッターアカウント一つ作成するのにも多大な労力を費やしている組織は多いのではないだろうか。
  2. インターアクションのリスク:SNSの最たる魅力はユーザーとの交流にある。日本の組織はこうした交流を通じて何か悪いことが起きることを恐れる傾向にある。悪意のあるユーザーがコメント欄を荒らした場合、誰の責任となり、どう対処すべきなのか。ここでも責任問題が大きな壁となる。どんなにSNSのメリットがあっても、こうした小さなデメリットのほうが大きく目に映る。そういった企業文化が根付いている組織は多いのではないだろうか。

これらのリスクによって、日本はSNSのメリットを十分生かしきれていないような気がする。組織のニュースや活動に関するプレスリリースを共有するにとどまり、他団体のニュースへのコメントやそれらの共有を行っている組織はどれほどあるだろうか。責任問題からの脱却がない限り、IDSのようなSNSの活用は難しい。ではどうすべきか。

解決法はすでに示されている。日本の開発業界は、ジェームス・ジョージャラーキスの6番目の秘訣から学ぶことができるはずだ。メディアポリシーでSNSを活用した職員個人レベルの発信を推進し、擁護する。日本の援助をもっと可視化するためには、これが一番早い方法である気がする。

世界一の機関がいうのだからやってみて損はないはずだ。

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