タイ

スマートシティの前に

Photograph: Ippei Tsuruga

半月ほど前、バンコク一帯は大気汚染濃度が高くなり、小中高校、大学が2日間すべて休校になった。自分ではそれほど自覚はなかったが、街を歩くとみんながマスクをしていて、それが異様な光景に映り驚いた。

他方、バンコクの交通事情は日増しに悪化している。タイではオートバイがタクシーになった「バイタク」が人気を博し、交通が大渋滞している中を車にかするようにしてすり抜けてゆく。安くて便利な乗り物だが、その交通マナーの悪さは定評がある。横断歩道の信号が赤になっても、信号で止まるバイタクは2-3割しかない。歩いていても、車を運転していても危なくてしょうがない。私は通勤に車を使うことが多いが、朝の通勤時間帯は15キロぐらい離れている職場に行くのに1時間半から2時間近くかかる。それ故、会議などで時間を厳守しなければならない時は車ではあてにならず、電車で行くことにしている。

先日、朝からバンコクの中心地域で会議があり、遅れてはいけないと思い早めに家を出た。駅に着いたのが朝の7時半、それからなんと電車を何台も(乗り過ごすというか)見過ごすことになった。トンブリ地区という急速に発展する新興住宅地域とバンコクの中心を結ぶこの高架鉄道は2、3年前に再延長になったばかり。通勤時間は大混雑し、その度合いは日増しに悪化している。電車のドアが開くと超満員の車内から降りる人がほとんどいないので隙間ができない。中に入ろうにもチャンスがない。ましてや、タイ人は中に詰めて隙間を空けてあげようという意思を持つ人がいないのではないか、と思うほど、強引に割り込もうとすると身を構えられる。

そして何台も見送ることが、ごく当たり前のように気長に待つ。この人たちが日本のラッシュ時の光景を見たらどう思うだろうかと想像したが、このソフトさはタイ人の気質なのだろう。彼らの後ろに並んだ私は、気が付いたら40分以上、11台もの電車に乗れずに見送っていた。それでも会議には間に合ったが、ネクタイ姿で汗だくの私はなんとも言い難い、暗い気持ちになった。

この会議では、急速な都市化に向けた、将来のスマートシティの構築などが話し合われた。IT技術などを駆使した安全で住みやすい持続可能な理想的な都市構想など、興味深い内容だった。だが、大気汚染問題や、マナーの悪いオートバイの運転を取り締まること、都市の交通渋滞や、通勤通学時の混雑解消など、差し迫った重要な現実問題の解決に、スマートシティに向けた先端技術や知識が優先的に使われることを願わざるを得なかった。

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