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国際機関邦人職員インタビュー:ILO 敦賀一平さん

ーー現在の仕事の概要、やりがいや大変さを教えて頂けますか。

今の仕事の概要としては、日本の厚生労働省から、ILOが任意拠出金として頂いている予算を元に、社会保険の案件があり、そのプロジェクト・マネージャという立場で仕事をしています。具体的には、3つのコンポーネントがあります。

一つ目はASEAN事務局。Regional Projectなので、ASEANの地域全体を見渡して、大きな課題の一つである、インフォーマル経済で働く人達の社会保障の拡充の政策をどうするか、という壮大な調査案件が一つあって、皆でリサーチをしています。

二つ目は、ベトナムの仕事をバンコクから見ています。ベトナムでは、社会保険改革、おもに公的年金制度の改革に、このプロジェクトを通じてILOが携わっています。これまでのベトナムの公的年金制度は、全ての人が恩恵を受けるという形にはなっていなかったのですが、そこをより広い人々が加入できる、年金を受け取れるようなシステムに、ベトナム政府と一緒に変えていく、という改革のお手伝いをするということをILOがやっています。私は途中からこのプロジェクトに加わり、今も継続しています。

三つ目は、インドネシアの仕事です。インドネシアでも、インフォーマル経済の社会保障の拡充という取り組みを進めていて、調査研究もやっていたんですが、私が着任した3月下旬から、プロジェクトの中で何か一つ支援を大きな柱としてできないかな、と考えていたときに、インドネシア政府の方からILOにかねてから支援の要請があった雇用保険の導入について、ILOがこのプロジェクトを通じて支援しよう、ということにしました。この半年間は、新しいプロジェクトを立ち上げるのではなく、既存のプロジェクトの限られたリソースの中で、今まさにインドネシアがやろうとしていることのお手伝いができないかな、ということで、全く無かった失業保険・雇用保険といった制度の導入をするために、様々なな企画を作っているところです。

ーーバンコクのアジア太平洋総局に籍を置きながら、実際はインドネシア・ベトナムにいるのが大半、ということでしょうか。

そうですね、月の一週間ずつベトナムとインドネシアにいますね。それであまりにも出張が多いので、最初はビックリしましたが、最近徐々にバスに乗るような感覚で飛行機に乗れるようになってきて(笑)。先日、飛行機に乗った数を数えたら、乗り継ぎを併せてこの5ヶ月間に50本に乗っていて.. タクシーの中で過ごしてる時間とか空港で待っている時間を有効に使う方法を考えなくては、と感じています。それが大変さということに繋がるのかもしれないですけど、ジュネーブからバンコクに移ってきて、生活の仕方が変わったということでしょうか。時間の使い方を変えないと、どこでも仕事ができるようにしないと、という大変さがありますね。

ーー飛行機の中では、どんな事を考えているのですか。

休めればいいのですが、ほとんどのケースは時差もないので。仕事をするようにしていますね。ベトナムは片道一時間半、インドネシアは3時間半掛かります。到着してから車の中では作業ができないので、行くときは出張の準備をして、帰りの便では出張の報告書を書いたり。どういうことかというと、まだ頭の切り替えというのがうまくできなくて、ベトナムの仕事をインドネシアにいながらやる、というのが私の場合はまだ難しいんです。だから、ベトナムに行くときにベトナム・モードに切り替えるために、コンサルタントの人からもらったベトナムに関する資料を読む込む、というような頭の切り替えをする時間に、行きの飛行機は使っている、という感じですね。

ーーその大変さと比例してやりがいも大きいですか。

そうですね。やはり今目の前で動いている事を扱っている感覚があるので、やりがいはすごくありますね。やりがいを通り越して、毎日が必死ですけど。あともう一つは、私の下にスタッフがいるんです。ベトナムに2人、インドネシアに2人、バンコクに1人と計5人いて、それぞれ違う国で仕事をしているのですが、私が管理・指示を出す必要があって、これは結構難しいな、とまだ思っています。チームがうまく機能し始めれば、すごくやりがいを感じるんでしょうけれど。まだ5ヶ月目で、このプロジェクト自体は、あと半年ちょっとでひと段落着きますので、その中でチームを作っていく、調和を保っていく、という難しさもあります。その間にスタッフもやめたりしますから。やはりプロジェクトの契約なので、次の仕事を探す人もいます。スタッフがいなくなったところを穴埋めするのも私しかいないので、そういう大変さはありますね。

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