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国際機関邦人職員インタビュー:ILO 敦賀一平さん

ーー敦賀さんは仕事もさることながら、個人ブログやThe Povertistといったインターネット上の発信も活発になさっていますが、オンラインマガジンの運営をされる上でのやりがいや苦労があれば教えて頂けますか。

まず最初に始めたのは、The Povertistというオンラインマガジンの方で、元々ベースになっていたのが、私がずっと昔からやっていた個人のブログだったんですが、それはILOのカンボジアの事務所にインターンで行ったときから、もう10年近くやっています。

その後、JICAで仕事を始めて一番強く感じたのは、皆発信しないじゃないですか。それで自分だけそうやって発信しようとずっと思っていたんですが、一人でやっているには限界があるなと思って。少し外に目を向けたときに、世界銀行であれば世銀の公式ブログがあって、2010年ごろから他の機関のサイトでも職員個人が発信する文化が徐々に始まっていました。今ではもう当たり前に、英語のプロフェッショナルたちは個人の言葉でツイッターなりSNSなり何でも発信してるじゃないですか。そういうのが全然日本では無かったと感じていたんですね。そこで、自分ひとりでやっていてもこの文化は創れないな、と思って。

一人ひとりが自分の言葉で発信するようにならないと、日本の開発援助が世界とは戦っていけないという最初の問題意識がありましたね。自分だけでちまちまとブログを書いているのではなくて、皆が書きやすい場所を作る、というようにマインドセットをシフトし始めたのが、ここ3~4年ですね。

誰にも知られていないようなマイナーサイトのままだと誰も書きたいとは思わないので、ある程度は自分がたくさん書いて、まずはプラットフォームがあるという事を認識してもらうことから始めました。最初は孤独でしたけど、しばらくは自分ひとりで書いていましたね。皆が書く文化を創りたい、というモチベーションですね、最初は。

ここ最近はありがたいことにたくさんの方が賛同して下さるようになって、私からあまりお声がけしなくても、ホームページ経由で不定期に寄稿してくれる方、毎月書いてくれる方が少しずつ出始めていて、最近は自分が執筆するというより編集に徹することも多いですね。表記を整えたりの程度で、ほとんど私の方では編集しないですけど。皆さんが自由に発信する、そういう場ができればな、というやりがいですかね。皆が書けるようになったらいいな、という。それだけですね。

ジャーナルの出版には、peer reviewとかたくさん過程があって、色んな人のコメントが入った上で世の中に出て行く文章があります。それはそれでいいと思うんですが、もっと早くタイムリーに、また短かったり不完全な文章でもとりあえず出す。最近はSNSなどでも世間の反応が得やすいので、何か言われて納得するのであれば自分の考えを改めるきっかけにもなるし、そこからさらに新しいアイディアが生まれるかもしれない。自分の中で抱えていて、アイディアが育っていくこともあると思いますが、アイディアを表に出して、自分が置かれている状況で得た情報を世の中に出していくことで、他の人がそれを参考にすることもあるだろうし、自分にとってもいいことがあるだろうし。それを日本語でやる、ということによって日本の開発援助の業界全体がもっと自発的に動いていくような。自分で考える人達が増えることによって、中の人が語ることによって、組織力だけではなく、個人の力を高める。日本のサッカーはパス回しがうまいけど、まだ個人の力が弱いので弱かったというのと、同じようなことだと思います。個人の力を強くすることによって、個人の発信力を強くすることによって、日本の国際協力業界が強くなる。その一つのきっかけになるような、発信のプラットフォームを作りたいな、と思ってきましたし、最近は少しずつ賛同してくれる人も出てきているので、もう少し頑張りたいな、と思いますね。

個人のブログは、もう好き勝手書いているので(笑)。自分にとってのメモ帳みたいな感じですね。考えを書き留めておく。実名で世の中に文章を出すことは、それなりに自分でリスクを負うこととなるので、自分の中ではテストケースとして個人ブログを使っています。世間はどういう反応をするのかな、というのを試し書きしている感じですね。実験のような記事をいきなり皆のプラットフォーム(Povertist)で書いてしまうとあまり冒険ができないのです。プラットフォームを作っている側としてはもう少ししっかりした記事をPovertistでは出さないと駄目だなと。自分のホームページであれば、試行錯誤しながら新しい書き方をしてみたりとか、新しい言葉の使い方をしてみることで、世間はどう受け止めるのか実験できます。グループで活動しているロックバンドのアーティストが、ソロ活動で新しいことをテストする、そんなイメージです。CHAGE and ASKAがCHAGE and ASKAとして楽曲を作るよりも、ASKAさん単体だとちょっと冒険ができる、そんなイメージだと思います(笑)。

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