国際

国際機関邦人職員インタビュー:ILO 敦賀一平さん

ーー今後のキャリア・プラン、あと夢があれば教えて頂けますか。

どの国連職員もそうだと思いますが、終身雇用が無くなって、自分の名前でどこまで行っても戦っていかないと駄目だと思うんですよね。それで博士課程に行く人もいれば、そうじゃない人もいる。正直、まだ一年先、二年先は見えていないですね。だけど、今やっている仕事がやりがいを感じながらできているので、一年は頑張ってみようと思っていますし、その後どうするというのは、それから見えてくるのかな、という気がしていますね。だからまだ2年先を考えられるほど、今の仕事を終えようという感じではないし、逆にこれからずっとILOで働いていきたいと言ったところで、そういう環境が自分に用意されているかも分からないので。今、目の前にあることをやりつつ、新しい機会を自分で作っていく。

どうしても雇われの身のマインドセットを僕も持ってしまいがちなんですけど、もっと能動的に動けば、最近は政府からの資金だけじゃなくて、色んなパートナーシップが可能な時代だと思うので、仮にそれが自分の雇用とか、今やっているプロジェクトに直接関係無くても、何か新しい動きを自分で作っていけるキャリア・パスを作れるといいなと思いますね。それが自分の価値にもなると思うので。

ILOのプロジェクトは、基本的には個人事業主の集まりのような感じです。だから、自分で新しい動きを作っていける人が結果的には残っていくでしょうし、そういう人材になりたいとは思っています。

夢は・・・そうですね。国連でのキャリア・パスの話をずっとしてきたんですが、これからの時代を考えていくと、あまり組織に捉われる仕事だけを見ていても仕方ないのかな、と思っています。それがお金に繋がるのかは次の話で、お金に繋がらなくても何か面白いことがあれば仕事以外にもやったらいいと思うし、それが結果的にお金が回るような仕組みの話なのであれば、そのとき考えればいいと思うし。面白いことには色々手を出していきたいな、という感じです。こう話していると、夢らしい夢ではないですね。日々一生懸命、生きています(笑)。

ーー最後の質問ですが、敦賀さんはウェブサイト上でも公開でキャリア・アドバイスなどをされていますが、国際機関でのキャリアを目指している人達に一言アドバイスを頂けますか。

国際協力キャリアフォーラムと仰々しいタイトルでオンラインキャリア相談を受け付けています。ウェブサイトでも、たくさん質問が来ますね。その中で一番多いのが、国連職員になるにはどうしたらいいですか、という率直な質問があって、たぶん多くの現役国連職員の人達はふざけるなと言って突き返していると思います。でも僕は割とまじめに答えていて、いつも言うのが、国連職員がゴールじゃない、というのは意識した方がいいということです。これまでもそうかもしれないし、これからはもっと国際機関のあり方が変わっていくと思うので。国際機関が政府からお金を貰う文化ではなくなりつつあり、民間企業からもどんどんお金が入ってきているし。国際協力のプレーヤーがどんどん変わっていく時代だと思うので。

これまで活躍してきた人の本・ブログ・記事を読んで、描いてきた国際協力のイメージと、これから皆さんが接する国際協力のあり方はだいぶ違ってくると思います。どこまでいっても、自分が何をやりたいか、何に関心があるかというのを自分で考え始める、なるべく早く考え始める環境を作るのがいいのかな、と思いますね。色んな人の話を聞いて、色んな人の過去のエピソードを聞くのはいいんですが、自分が何をやりたいのか、関心があるのか、というのを自分の足で歩いて確かめてみたり、人に会いに行って話を聞くのもいいですし。

自分の関心があるところから切り口を見つけてどんどん探していく、っていう姿勢が大事なのかなと思いますね。その一番最初の最初で、どうしたらいいですか、というのは僕のページにどんどん書き込んでいただければ、毎回同じような回答になるかもしれないですが、跳ねのけはしないので(笑)。アドバイスできることはします。これまでの国際協力と、これからの国際協力は恐らく違うので、自分で考える力を養う、というのをなるべく早い時からやっていくのがいいんじゃないかな、と思います。

–    お忙しい中、ありがとうございました。

聞き手:浅海誠(ILOジュネーブ本部/IT部門)
この記事はジュネーブ国際機関日本人職員会(JSAG)に掲載されたものです。

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