ベトナム

ベトナムで収入向上支援プロジェクト、青年海外協力隊×福島の和菓子職人

Photograph: Nguyen Viet Cuong

JICA青年海外協力隊としてベトナムで活動中の山田邦永氏が、配属先のNGOである「VIRI」と福島県二本松市の菓子職人である松本克久氏と協力し、必要な費用の一部をクラウドファンディングで資金調達しながら、ゲアン省ナムダン県で葛(くず)を使った新しいお土産開発を進めている。

ベトナムの中でも貧しいゲアン省、UNESCO無形文化遺産「ビーザム」

ベトナムには全部で63の市・省がある。ゲアン省はベトナム北中部に位置し、海岸平野部からラオス国境山岳地帯に広がり、省都はヴィン市である。2014年のゲアン省の1人あたりの月平均収入は約7,600円と、国平均の約13,000円及び北中及び中部沿岸地域の約9,500円を下回っており、ベトナムの中でも最も貧しい省の1つである。

Source: General Statistics Office of Vietnam

ゲアン省に代々伝わる伝統的な民謡「ビーザム」は、2014年、UNESCOの無形文化遺産に登録されている。ビーザムでは、両親への敬意、勤勉さ、誠実さ等、美徳とされることが、ゲアン省の方言により綴られている。ゲアン省民はビーザムを子守唄として歌い、また、船を漕ぎ、織り物をし、農作業をする際など、日常生活とともに歌っており、満たされた気持ちで日々の生活を送る上で重要な役割を果たしている。

Photograph: Nguyen Viet Cuong

葛の生産地、ホーチミン氏の故郷のゲアン省ナムダン県

ゲアン省ナムダン県は、省都ヴィン市から西へ15kmに位置し、ベトナム建国の父、ホーチミン氏の生家があることで有名な地域である。ナムダン県は、やせた土地、台風・洪水被害などの厳しい自然条件や、道路の整備不足による経済の閉塞などにより、地域住民の所得は特に低く、住民の多くは極めて厳しい生活を強いられている。

Photograph: Kuniharu Yamada

ナムダン県のナムアイン村生活共同体では、現地で採れる葛(くず)の根から、葛の粉を製品として生産している。多くのベトナム人は夏の暑い時期に葛の粉をお湯に溶かし、ライムやウコンを混ぜて飲んでいる。共同体メンバーは、ナムダン県の葛を使った製品を生み出すことに誇りを持っており、葛の粉を使ったナムダン県を代表するような新しいお土産を開発しようと、意欲に溢れている。この意欲を後押しすべく立ち上がったのが、福島県二本松市の「菓子処まつもと」の職人、松本克久氏である。

Photograph: Kuniharu Yamada and Nguyen Viet Cuong

福島県二本松市の菓子職人との協働

二本松市には、JICA青年海外協力隊の派遣前訓練の行われる施設がある。松本氏は2017年8月、本訓練所にて協力隊訓練生へを対象に、任地で入手しやすい原材料を使った和菓子作り講座を実施した(講座企画:モロッコで料理の支援をしている青年海外協力隊の前川七恵氏)。現在ベトナムの農村支援NGO「VIRI」で青年海外協力隊として活動する山田邦永氏も、本講座に参加していた。

Photograph: Kuniharu Yamada

山田氏はベトナムで活動する中でゲアン省ナムダン県における収入向上の必要性を感じ、葛の粉を使ったクッキーのお土産の開発の可能性を松本氏と議論を重ねた末に、協働が実現した。クッキーを焼成するためのオーブン購入費用等、必要な費用の一部をクラウドファンディングで資金調達している。

青年海外協力隊の活動の進め方の選択肢の1つ

ゲアン省ナムダン県における本取り組みにおいては、青年海外協力隊の山田氏がベトナム国内での物資調達や生産者とのコミュニケーションを進めながら、松本氏はレシピ開発や技術指導に注力をするという、効果的な協働体制が確立されている。異なる得意分野を持つ者同士が協働し、発展途上国の現地のニーズを満たすプロジェクトを企画し、必要資金をクラウドファンディングを通して多くの方々から募るというこの体制の在り方は、青年海外協力隊が活動を進める手段の1つとなり得るのではないか。

おみやげ開発支援!ベトナム建国の父、ホーチミン氏の故郷

日本時間2018年9月9日(日)午後23:00までクラウドファンディングに挑戦しています。ベトナム建国の父ホーチミン氏の故郷ゲアン省ナムダン県で、収入向上を目指して、葛(くず)の粉を使った特別なクッキーをおみやげとして開発するプロジェクトを実施します。プロジェクトやクラウドファンディングの詳細はこちらからご覧ください。

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