国際

世界最大の死因、NCDs(非感染性疾患)の潮流

Photograph: Ippei Tsuruga

2018年9月、国連総会で非感染性疾患(Non Communicable Diseases: NCDs)に関するハイレベル会合が開催される。非感染性疾患とは、日本語の生活習慣病に近い概念で、不健康な食事や運動習慣、喫煙、過度の飲酒など是正可能な危険因子を原因とし、生活習慣の改善によって予防可能な疾患をまとめて指す総称である。狭義では、がん・糖尿病・循環器疾患(心筋梗塞など)・慢性呼吸器疾患を指すことが多い。

生活習慣病というと、先進国に暮らす裕福な人たちがなる病気というイメージを持つ人が多いと思われるが、実際にはNCDsで亡くなる人の大半は低中所得国に住む人たちとされる。2018年6月1日付で出されているWHOのFact sheetによると、世界全体の死亡者のうち、71%はNCDsによるものでその数は4,100万人にのぼる(うち、低中所得国に住む人たちは3,200万人)[1]。とりわけ、NCDsでは若年死亡(30〜69歳での死亡)が問題とされており、この年齢層のうち世界全体では毎年1,500万人がNCDsで亡くなり、そのうち85%は低中所得国に住む人たちと推計されている。かつて、低中所得国では感染性疾患(HIV/AIDSやマラリア等)や母子保健(妊娠出産の合併症等)で亡くなる人が大半であったが、今やアフリカやアジアを含めた多くの国で死因の第一位がNCDsになっている。

このような状況を踏まえ、2011年及び2014年には国連ハイレベル会合に於いてNCDsが取り上げられ、今後NCDsの流行を阻止するために国際社会が団結して取り組む必要性を述べた政治宣言が採択された。また、SDGsにもNCDs対策の重要性は明記されており、目標3.4には 「2030年までに、NCDsによる早期死亡を、予防や治療を通じて3分の1に減少させる」と掲げられるなど、今やグローバルヘルスに置いて、NCDsは最も重要な疾患としての位置を占めている。

NCDs対策の基本は「予防」と「管理」の2本柱で、WHOでは2013年5月のWHO総会で「NCDsの予防と管理に関する国際戦略:2013〜2020年行動計画」を採択[2]。2025年までにNCDsによる若年死亡を25%削減すること目標に掲げ、病気の予防と管理の双方に置いて、様々な取り組みを進めている。代表的なものでは、予防では受動喫煙対策や、子宮頸がん予防のためのHPVワクチンの推進、病気の管理としては、低中所得国でもNCDsの医薬品が適切に配備され、医師や看護師が適切にNCDs患者の対応ができるよう各国への技術支援の提供等を行なっている。

今回、3年ぶりにNCDsが国連ハイレベル会合で取り上げられる予定だが、そもそも、国連で保健関連議題が取り上げられることは稀で、中でも複数回取り上げられている保健議題はHIV/AIDSとNCDsだけになる。それだけ世界全体の注目度が高いということでもあり、世界最大の死因であるNCDsに今後国際社会がどう取り組んでいくのか、今秋のハイレベル会合の成果に期待が高まっている。


[1] WHO. Noncommunicable diseases key facts (as of 1 June 2018).
[2] WHO. Global action plan for the prevention and control of noncommunicable diseases 2013 – 2020.

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