ヨーロッパ・中央アジア

今後の展望-日本が中央アジアで果たす役割

Photograph: Naoki Nihei
Photograph: Naoki Nihei

わが国は単にエネルギー資源のような直接的な利益を追求するのではなく、中央アジア地域の発展と安定が、アフガニスタンひいてはユーラシア地域にもたらす利益という、より広い意味で得られる間接的な相互利益を追求し、積極的に中央アジア諸国を支援していく必要性があります。

日本は伝統ODA供与国(OECD-DAC諸国)の中で唯一の「中央アジア+日本」対話という地域協力推進プラットフォームを有する国です。近年は地理的に同地域を取り囲む中国とロシアがSCOや関税同盟等により大きな影響力を行使していますが、中央アジアの人々の日本に対する期待は想像以上に大きいものです。日本は中央アジア各国との関係を強化していくだけでなく、域内協力を促進するファシリテーター役としても活動することが期待されています。これまでの対話では、日本と中央アジア諸国のみという形式が中心でしたが、2015年3月に東京にて開催された中央アジア・シンポジウムは米国やロシアの研究者も招いての開催でした。我々は様々なレベルで、このようにより幅広いステークホルダーを取り込むことで「中央アジア+日本」対話が有意義かつ一層発展していくことを期待します。

Photograph: Akitoshi Iio
Photograph: Akitoshi Iio

また、域内協力を推進する上では、これまで大きな成功を収めているADBのCARECの枠組みにも積極的に参加することを継続すべきと考えます。更に、防災や国境管理等の国境を越える課題についてはUNDP等の国際機関とも効果的に連携して支援を継続する必要があります。

具体的に支援する内容は、国家経済の原動力となる産業開発への支援として、上位中所得国を中心に、エネルギー開発促進、電力、運輸交通分野の支援を継続することを提言します。特にトルクメニスタンでは、インド洋等へのガスルート多様化ニ-ズが高く、また、何れ訪れる対イラン経済制裁解除と、それに伴うトルクメニスタン・イランを経由した、中央アジアからペルシャ湾への物流路の開拓は、中央アジアにとどまらず、広くユーラシア全域に変化をもたらします。ハード面においては、安倍首相の「質の高いインフラ支援策」に合わせて、日本の高い技術力を生かした支援を実現すべく努力すべきである。これまでの支援でも日本製のエネルギー効率の高いガスタービンを発電所に導入したり、日本の技術をいかした鉄道橋梁の建設など十分な実績を有しています。

Photograph: Naoki Nihei
Photograph: Naoki Nihei

ハード面でも支援に加えて、ソフト面における支援もこれまでどおり支援する必要があります。それは、将来起こりうる政権交代と体制移行に備えて、新体制後の政府における統治能力を備えるために、将来の国づくりの人材育成はこれまで以上一層重要になります。また、同地域は旧ソ連時代に整備された教育システムやインフラにより、世界の他の途上国地域に比較しても、識字率が軒並み90%を大きく超えるなど教育水準が割合高いものの、旧ソ連式の権威主義的な教育が中心であり、時代に合わせた教育を行えるような人材を育成するという観点から、日本が中央アジア諸国から留学生を受け入れることは、中長期的に見て、中央アジア諸国の発展に資すると考えられます。

自国が抱える諸問題と向き合うべく、旧ソ連の一部であった歴史的経緯から結びつきが強いロシアだけでなく広く海外により良い教育の場を求める、意欲の高い優秀な若者が、中央アジア諸国では数多く出現しています。若年者人口が増加していることもあり、体制移行後に将来のリーダーとなる人材を日本で育てることは、日本と中央アジア諸国の関係を強化する上でも重要な先行投資になり得ます。

10月の安倍首相による中央アジア諸国歴訪が、これまでの価値観外交を継承し、今後も中央アジア地域の「質の高い成長」支援を積極的に続けていくことが相互の利益に繋がり、今後も「中央アジア+日本」対話を通じて、同地域の支援と域内協力を国際社会の中でリードしていく責務が日本にはあると考えます。我々は安倍首相の歴訪が一過性で終わるのではなく、これが日本の中央アジア外交の第4段階期のはじまりとして転換期となり、同地域への関与がこれまで以上に強固なものになることを期待しています。

 

※複数回にわたってお届けしてきたシリーズ「日本による中央アジア地域支援の展望-安倍首相中央アジア訪問に寄せて」は、今回が最終回となります。

 

寄稿者:中央アジア・コーカサス開発研究会

  • 二瓶直樹(国連開発計画対外関係・アドボカシー局)
  • 飯尾彰敏(元中央アジア地域有償資金協力専門家、JICAエチオピア事務所)
  • 齋藤竜太(筑波大学大学院人文社会科学研究科博士後期課程)

 

特集: 日本による中央アジア地域支援の展望

ご意見をお待ちしております

ご投稿が採用された場合は読者投稿欄「レター」に記事として掲載されます。投稿内容が記事下に自動表示されることはありません。

*