パレスチナ

ガザ完全封鎖から10年、女性の雇用と収入に繋がるパレスチナ刺繍

Photo: UNRWA

イスラエルによるガザの完全封鎖から10年

1967年に起こった中東戦争により、パレスチナのガザ地区とヨルダン川西岸地区はイスラエルの軍事占領下に置かれ、今年で50年。イスラエルが「テロ対策」とし、ガザ地区を完全封鎖して10年経つ。パレスチナの現在はどのような状況なのか。18年前からパレスチナとの関わりを持ち、現地の女性たちが作ったパレスチナ刺繍のフェアトレード商品や、パレスチナに唯一の織物工場からパレスチナ織物「ラスト・カフィーヤ®」を日本に届け、広める活動をしているパレスチナ・アマル代表の北村記世実氏に話を聞いた。

ガザは東地中海に面した東京都23区の2/3程度の小さな土地に180万人もの人々が暮らしている。ガザが完全封鎖されてから、「移動の自由もなく、ライフラインもコントロールされ、人口密度が高く、劣悪な環境の中での生活を余儀なくされている」と、北村氏は指摘する。

終わりのみえない失業率と貧困率

ガザは2006年以降、イスラエルに4回の大きな攻撃を受けた。特に2014年7月に起きた、イスラエルの大規模な侵攻では、50日間の軍事作戦で、子ども500人を含む市民1600人が殺害された。街は破壊され、封鎖され、生活も経済も破たんし、若者の失業率は60%と世界最悪の水準である。失業による貧困のため、人口180万人のうち約80%が国際援助に依存するしかない状況になっている(世界銀行)。男性でも失業率が高いガザで、特別な技術を持たない女性が、職を見つけ暮らしていくのは更に大変である。そんな女性の貴重な収入源の一つに、パレスチナ刺繍がある。

女性の雇用と安定した収入に繋がるパレスチナ刺繍

パレスチナ刺繍はパレスチナの伝統工芸であり、クロスステッチで時間をかけ作られた刺繍はとても高品質である。模様の一つ一つに花や星と言った意味がこめられてある。刺繍を使用し作られたた製品も、願い事をするときに鳥を空に放つパレスチナの風習が形になった鳥モチーフや、海に面していて魚がとれるガザの特徴が表されている魚のモチーフなど、その土地の特徴に基づいているものが多く見受けられる。

地域の特徴が模様にあらわれているため、見ただけでどこの地域で作られたものかがわかると言う。祖母から母、母から娘へと模様は代々受け継がれており、イスラエルの占領により自分の土地に住み続けることが困難なパレスチナ人にとって、故郷を思い出す心の支えの一つである。

1950年に国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)によって立ち上げられたパレスチナ刺繍プロジェクト「Sulafa」では、約300人の難民女性が働いている。作り手は、一家の大黒柱である夫を失った未亡人や、離婚し安定した収入がない弱い立場にある女性たちだ。刺繍を施した小物やドレスを作り販売することは、そんな女手一つで子どもを育てる女性たちの貴重な収入源となっている。

パレスチナ刺繍を通し、継続的に支援していくために

「Sulafa」の刺繍商品はアメリカなどでも販売されているが、女性たちの生活の安定を図るために、更に販売先を広めていくことが求められる。 商品として魅力的にも関わらず日本には、なかなか流通していない。

ガザがイスラエルに完全封鎖されてから、物の流通も人の移動も厳しく制限されているため、輸入することも叶わなかったと北村氏は言う。しかし、今回UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の刺繍プロジェクト「Sulafa」の日本でのパートナーになり、特別にガザの刺繍を日本に流通させることが可能になったそうだ。日本に流通させるにあたり、「支援」の手段の一つではなく、「ブランド」として魅力を全面に出して広めていく。より多くのガザの女性に安定した雇用と収入源を提供し、ガザの難民女性が自信と尊厳をもって人生を輝かせることができることを目標に活動を継続していく。

この記事は田中万由(Readyforキュレーター)が実施したインタビューをもとに書かれたものです。

パレスチナ刺繍の魅力を伝えたい!ガザ難民女性300人の誇りを

パレスチナ・アマルは、クラウドファンディングに挑戦しています。5月31日(水)午後11:00まで。現在、NEXTゴールとして2,000,000円の資金調達に挑戦中です。10年間、完全封鎖されている”天井のない牢獄”に住む、ガザ難民女性300人がつくる「パレスチナ刺繍」を日本にもブランドとして広めていきたい。プロジェクトやクラウドファンディングの詳細はこちらからご覧ください。

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