国際

世界中で増加する移民と結核対策の潮流

日本でもかつて「国民病」として恐れられた病気、結核。世界全体では依然として毎年1,040万人が罹患し、うち167万人が死亡すると推定され、感染症の中では最も死亡者数が多い病気である。日本では珍しくなった小児の結核も世界全体ではまだ多く、25万人ほどの子供が毎年結核で命を落としている。

このような状況を踏まえ、2015年に設定された持続可能な開発目標(SDGs)の中で、「2030年までに結核を撲滅する」という目標が掲げられ、現在世界中で様々な取り組みがなされているところである。しかしながら、その進捗は依然として遅く、年間1−2%の罹患率減少に留まっており、現在の減少スピードではおよそこの目標の達成は難しいと指摘されている(2030年までの目標達成には、年4−5%程度で罹患率を減少させる必要がある)。

結核自体は今から136年前にロバート・コッホにより発見され、世界保健機関(WHO)が結核による緊急事態宣言を発表してから今年で25年目に当たる。病気の中では、比較的長い歴史を持つ結核であるが、そんな結核が近年主に2つの理由から大きな注目を集めている−移民・難民と薬剤耐性問題である。

世界的に、移民・難民の問題が毎日のようにニュースに流れているが、公衆衛生学的な視点で見ると、人の移動に伴う病気の伝播が現在、ホスト国(移民・難民の受け入れ国)に影響を及ぼしつつある。日本でも、一昔前までは、「結核は高齢者の病気」という印象が強かったが、この数年で様変わりした。実際に、2007年時点では外国籍の結核患者の数は日本全体で842名だったのが、2014年には1,101名にまで増えている。とりわけ若年層においてその影響が顕著で、20−24歳における新規結核患者のうち、実に44.1%が外国籍であった(2014年)。このように、人の移動に伴いどのように結核の伝播を予防するかが、大きな関心事項となっている。

2つ目の薬剤耐性問題であるが、これは、従来の治療薬が不適切に使用されることによって、細菌やウイルスが薬への耐性を獲得してしまい、薬が効かなくなってしまう状態を言う。いずれ、薬剤耐性による死者数は癌による死者数を上回るという推計もあるが、実にこの薬剤耐性の30%は結核に関係するものである。

2018年9月には、国連総会の主要テーマとして結核が取り上げられることになっている[1]


[1] WHO. 2018. UN General Assembly High-Level Meeting on Ending TB.

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