アフリカ

TICAD VIに向け、UNDP/JICAがアフリカ開発について議論

Photograph: UNDP
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国連開発計画(UNDP)ニューヨーク本部対外関係・アドボカシー局ジャパンユニットの二瓶直樹です。9月28日、ニューヨークにて国際協力機構(JICA)の呼びかけにより、「産業開発とアフリカ開発アジェンダ2063の実施を通じたアフリカの構造転換」サイドイベントが開催されました。これに先立ち、国連ニューヨーク本部では、9月25日から27日の間「持続可能な開発(SDGs)に関するサミット」が開催され、2030年までの新たな開発目標が採択されました。第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)が2016年にケニア(ナイロビ)で開催されることも既に発表されており(時期は未定)、サイドイベントは、新たな目標に向かってアフリカ開発を考える重要な機会となりました。

本イベントはJICAとTICAD共催機関(国連開発計画:UNDP世界銀行、アフリカ連合委員会:AUC、国連アフリカ担当事務総長特別顧問室:UNOSSA)、およびアフリカ開発銀行(AfDB)、アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)、米・コロンビア大学が共催者となりました。

アフリカ開発会議(TICAD)はアフリカ開発を議論し、支援する開かれたフォーラムとして1993年以来過去5回開催され、アフリカのオーナーシップと国際社会のパートナーシップの原則を確立し、アフリカ開発の拡大・深化に大きな貢献を果たしてきました。2013年6月に横浜で開催されたTICAD Vの後に、アフリカ諸国から強い要望を受けて、TICADの開催間隔を従来の5年から3年に短縮し、首脳会合を含むTICAD関連会合を日本とアフリカで交互開催とすることが合意されました。

2016年には元首レベルの会合(TICAD VI)が初めてアフリカで開催されます。近年アフリカは、開発だけでなく貿易投資などの経済的分野でも国際社会の注目を集めており、TICADに続いて中国、米国、EU、韓国、インドなど、多くの国が自国とアフリカとの開発協力を協議するフォーラムを開催しています。広く関係者に開放され、多様な議論とパートナーシップを育んできたTICADには、他のフォーラムにない多くの開発アクターに開かれたフォーラムとしての貢献がありますが、TICAD VIを機にTICADもさらに進化を遂げることが期待されています。

さて、今回のイベントはJICA研究所とノーベル経済賞を受賞している経済学者ジョゼフ・スティグリッツ教授率いるコロンビア大学関係者との共同研究の成果として編纂された書籍『Industrial Policy and Economic Transformation in Africa』の公式発表会でもありました。2000年以降、サブサハラ・アフリカ地域における経済成長は石油等の天然資源に依存した経済構造である国が多くを占めていますが、エチオピアやルワンダなど、必ずしもそうではない国々もあります。共同研究は、アフリカ諸国が天然資源に依存せずに持続的な経済発展を遂げるには、学習・産業・技術政策(LIT policies)が重要であるとデータ等により実証しています。

冒頭の基調講演では田中明彦・JICA前理事長(2015年9月30日に退任、10月1日より東京大学教授)が「構造転換の促進」と「強靭性強化」への取り組みとしてのアフリカ産業開発の必要性、アジアの経験のアフリカへの応用の可能性、エチオピアにおける産業政策対話とカイゼン*の実績などを紹介しました。UNDPのヘレン・クラーク総裁は、産業開発において人間開発が重要であることを強調した上で、経済構造・生産品の多様化、ジェンダー問題を含む格差是正への取り組み、若者の雇用創出などが同時に重要となると述べました。

エラストゥス・ムウェンチャAUC副委員長は自身がケニア政府職員で産業開発を担当した経験に触れて、「当時はほとんど注目されなかったが産業開発がようやく今アフリカの開発における重要課題と認識されたことを嬉しく思います」と述べました。スティグリッツ教授は、アフリカ諸国は日本をはじめとするアジアの成功経験から学び、経済成長を実現できる可能性があると強調しました。

今回のサイドイベントのテーマは産業開発、産業政策、産業化と、「産業」がキーワードでした。近年のTICADでは、主にインフラ、人材育成、ジェンダー、平和と安定といったトピックに注目が集まることが多かったことを考えると、経済成長に直結する産業が紆余曲折を経て再びアフリカ開発のキーワードになりつつあることを、今回のイベントを通じて強く感じました。今回のイベントでの議論を通じて、私は産業開発とは、単純な1つの課題ではなく、雇用創出、労働市場拡大、輸出指向型生産、職業訓練・人材開発、中小企業育成などに複合的に取り組むことが必要で、そのための政策立案がアフリカの産業開発、経済成長に非常に重要であることを認識しました。また、政策立案については、開発の度合いに応じて、日本を始めとするアジア地域の成功例を良く学び、それをうまく反映させた政策づくりが鍵であると感じました。

イベント最後には、ケニアのモハメッド外務国際貿易長官が「ホスト国としてTICAD VIの成功に全力を尽くします。来年ナイロビに皆様をお迎えすることを楽しみにしています」とアフリカ諸国を代表して力強い挨拶をしました。UNDPは2016年のTICAD VIに向けて、TICAD Vの成果をもとに、共催者および多くの関係者と連携しながら、産業開発、女性の地位向上、格差是正、平和と安定、感染症対策、気候変動、防災等様々な分野でアフリカ開発にこれからも取り組んでいきます。

TICAD
TICADとは,Tokyo International Conference on African Development(アフリカ開発会議)の略で、アフリカの開発をテーマとする国際会議。1993年以降日本政府が主導し、国連、国連開発計画(UNDP)、アフリカ連合委員会(AUC)および世界銀行と共同開催している。5年に1回の首脳級会合に加えて、閣僚級会合などを開催。2013年6月のTICAD Vでは、最大規模となる39人の国家元首・首脳級を含む51か国のアフリカ諸国、31か国の開発パートナー諸国およびアジア諸国、72の国際機関および地域機関の代表、民間セクター、NGO等市民社会の代表など約4500人以上が参加した。UNDPは第2回TICADより共催を務め、TICAD Vにはヘレン・クラーク総裁がUNDPを代表して参加した。

カイゼン
「改善」のこと。カイゼンは、おもに製造業の生産現場で行われている作業の見直し活動のことを指す。作業効率の向上や安全性の確保などに関して、経営陣から指示されるのではなく、現場の作業者が中心となって知恵を出し合い、ボトムアップで問題解決をはかっていく点が特徴。この概念は海外にも「kaizen」という名前で広く普及し、とくにトヨタ自動車のカイゼンは有名。JICAは技術協力により、エチオピアはじめ、エジプト、ブラジル、カンボジア等の国々でカイゼンによる企業の生産性向上を支援している。開発現場でも近年、「カイゼン」の概念が紹介され、導入されている。

 

国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所ニュースレター 37号より転載

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