タイ

変革図る山岳少数民族

Photograph: Linda De Volder

タイ北部の洞窟に閉じ込められたサッカー少年らのニュースが世界中を駆け巡ってから、早いもので数カ月が過ぎた。その間にこの出来事は、いろいろな面で普段は知ることができないような話題を提供してくれた。例えば13人のうち少年3人と1人のコーチは、タイで生まれながら、国籍は持っておらず、パスポートがないために海外旅行もできない事実が発覚した(4人はその後、政府から国籍を付与され、海外へ行って、招待されていたサッカー観戦などをした)。

アムネスティ日本によると、1974年にタイ政府は山岳民族に国籍を与えることを決議したものの、現在でもこうした無国籍者は全山岳民族の4分の1に当たるという。国籍取得の条件が満たせないことや政府の認定作業が遅れていることなどが原因という。

タイ北部にはカレン族、モン族、アカ族、ヤオ族、リス族などをはじめとして10以上の主要な山岳少数民族がおり、それぞれ独自の異なる言語や文化・習慣を持つ。その総人口は90万人を超える(タイ全人口の1.5%)といわれる。もともとは中国やチベット方面からミャンマーやラオスを経由してタイに移り住み、山間地を移動しながら伝統的な焼き畑農業をして食料を自給し生活してきた。

彼らの多くは精霊崇拝(アニミズム)をしており、事物や現象に霊魂や精霊が宿ると信じている。国境を渡り歩き、異なる言語や信仰を持つ少数民族の彼らは近年、焼き畑農業が及ぼす自然環境に対する悪影響やアヘンの原料となるケシの栽培に対する取り締まり強化の中で、生き残りの道を模索してきた。

その中で王室が中心になり北部山岳地帯に普及させた自然農法のコーヒー栽培は、確実に成果を上げている。焼き畑農業からコーヒーを中心とした定着型の、環境に適応した持続可能な農業への移行や、ケシ栽培に代わるコーヒー豆生産による換金収入の道の確保は山間の村々に新しい希望をもたらしている。

私が訪れたチェンライのメーチャンタイ村は、2000年ごろまでケシの花を栽培していたそうだ。コーヒー豆の生産者価格は仲買人に買いたたかれ、若者たちが村に残りたくても雇用や収入の機会になかなかありつけないのが、まだ現状だ。

だが今、村を挙げて、共同経営による独自のコーヒーのブランド化と、コーヒー加工場運営による雇用創出や収入増、そして持続可能な自然資源の保護と利用を柱とした村の中長期的発展を計画している。村民が団結して共同で村全体を良くしようという運動は、成功すれば、同じような状況にある他の地域にお手本として大きな影響をもたらすだろう。

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